
サイバー攻撃は、もはや一部の大企業や政府機関だけの問題ではありません。製造業、医療、金融、小売、物流、メディア、テーマパーク、公共交通まで、業種や規模を問わず被害が発生しています。
特に近年は、ランサムウェア、サプライチェーン攻撃、DDoS攻撃、不正アクセス、生成AIを悪用した詐欺など、手口が多様化しています。中小企業も「うちは狙われない」とは言えません。攻撃者から見ると、セキュリティが手薄な企業は、取引先や大企業へ侵入するための踏み台にもなり得ます。
この記事では、CyberCrewのホワイトハッカーの視点から、国内外のサイバー攻撃事例14件を整理し、被害の内容、攻撃手口、そこから学ぶべき教訓をわかりやすく解説します。
なお、サイバー攻撃へは事前の対策が重要となっており、脆弱性診断やペネトレーションテストが有効です。CyberCrewでは、複数名のホワイトハッカーが在籍し、攻撃者が実際に狙うポイントから現場感のあるテストでリスクを評価します。まずは無料でご相談ください。
TABLE OF CONTENTS
サイバー攻撃とは?
サイバー攻撃とは、インターネットや社内ネットワーク、パソコン、スマートフォン、サーバー、クラウドサービスなどに対して、悪意ある第三者が不正な操作や妨害を行うことです。
難しく聞こえるかもしれませんが、現実世界に置き換えると「空き巣」「詐欺」「営業妨害」「盗聴」「恐喝」に近い行為が、デジタル上で行われていると考えると分かりやすいです。
たとえば、偽メールでID・パスワードを盗むフィッシングは、銀行員を装って暗証番号を聞き出す詐欺に似ています。ランサムウェアは、会社の書類棚に鍵をかけられ、「開けてほしければ金を払え」と脅されるようなものです。DDoS攻撃は、店舗に嫌がらせ電話を大量にかけて営業できなくする行為に近いです。
サイバー攻撃の対象は、企業だけではありません。個人のSNS、ネットバンキング、クレジットカード、スマホ、メールアカウントも狙われます。企業の場合は、情報漏洩、業務停止、損害賠償、信用失墜、取引停止など、経営に直結する被害につながります。
つまり、サイバー攻撃はIT部門だけの問題ではなく、個人の生活と企業経営の両方に関わるリスクです。
サイバー攻撃の被害は年々深刻化している
サイバー攻撃が深刻化していることは、公的機関の統計からも明らかです。
警察庁のサイバー空間をめぐる脅威の情勢等では、サイバー犯罪・サイバー攻撃に関する統計が継続的に公表されています。ランサムウェア被害では、VPN機器やリモートデスクトップを経由した侵入が多く、外部から接続できる仕組みの管理が大きな課題になっています。
また、IPAの情報セキュリティ10大脅威 2026では、組織向け脅威の1位が「ランサム攻撃による被害」、2位が「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」、3位が「AIの利用をめぐるサイバーリスク」とされています。
NICTのNICTER観測レポート2025では、2025年に観測されたサイバー攻撃関連通信が約7,010億パケットに達し、2024年から約2.2%増加したと公表されています。インターネット上での探索活動や攻撃準備行動が、高い水準で常態化していることが分かります。
| 公的データ | 主な内容 | 読み取れるリスク |
|---|---|---|
| 警察庁 | ランサムウェア被害や不正アクセス等の統計を公表 | VPN・RDPなど外部接続経路の管理が重要 |
| IPA | 2026年の組織向け脅威1位はランサム攻撃 | 業務停止を伴う攻撃が依然として深刻 |
| NICT | 2025年のサイバー攻撃関連通信は約7,010億パケット | 攻撃準備やスキャン活動が常態化 |
これらの数字から分かるのは、サイバー攻撃が「珍しい事件」ではなくなっていることです。攻撃者は常にインターネット上の弱点を探しており、放置されたVPN、古いサーバー、脆弱なWebアプリ、使い回されたパスワードを見つけると、そこを入口にします。
サイバー攻撃の対象者と目的
サイバー攻撃を正しく理解するには、「誰が狙われるのか」と「何のために攻撃されるのか」を分けて考えることが大切です。攻撃者の標的と目的を理解すると、自社がどこを優先して守るべきかが見えてきます。
サイバー攻撃の対象者
サイバー攻撃の対象は、大企業だけではありません。主な対象は次のとおりです。
- 大企業・上場企業
- 中小企業
- 医療機関
- 金融機関
- 製造業
- 公共機関・自治体
- 小売・ECサイト
- 物流・交通インフラ
- 学校・研究機関
- 個人ユーザー
特に注意したいのが、中小企業です。攻撃者は、中小企業そのものから情報や金銭を奪うだけでなく、取引先の大企業へ侵入するための踏み台として利用することがあります。
たとえば、業務委託先や取引先のメールアカウントが乗っ取られると、本物の取引先を装ったメールが送られます。受け取った側は警戒心を下げやすく、添付ファイルやURLを開いてしまう可能性があります。
サプライチェーン攻撃では、自社のセキュリティだけでなく、委託先や取引先のセキュリティもリスクになります。「自社は小さいから狙われない」ではなく、「小さいからこそ入口として狙われる」可能性があるのです。
サイバー攻撃の目的
サイバー攻撃の目的は、大きく3つに分けられます。
| 目的 | 攻撃者の狙い | 使われやすい手口 |
|---|---|---|
| 愉快犯・自己顕示欲 | 攻撃成功を誇示する、混乱を起こす | Web改ざん、DDoS、不正アクセス |
| 金銭目的・産業スパイ | 身代金、個人情報、機密情報、認証情報を得る | ランサムウェア、フィッシング、標的型攻撃 |
| 政治的・社会的主張 | 抗議、妨害、世論操作、国家的目的 | DDoS、情報窃取、ハクティビズム、偽情報拡散 |
近年、企業にとって最も現実的なのは金銭目的の攻撃です。ランサムウェアで業務を止め、復旧や情報公開の停止と引き換えに金銭を要求する手口が代表例です。
また、産業スパイ目的で設計図、研究情報、顧客情報、営業秘密が狙われることもあります。製造業、製薬、金融、IT、研究機関などは、特に注意が必要です。
代表的なサイバー攻撃の種類と特徴

サイバー攻撃には多くの種類があります。ここでは、企業が特に知っておくべき代表的な攻撃を一覧で整理します。
| 攻撃手口 | 概要 | 主な被害 |
|---|---|---|
| ランサムウェア | データを暗号化し、復旧と引き換えに身代金を要求 | 業務停止、情報流出、復旧費用 |
| 標的型攻撃 | 特定企業を狙って長期的に侵入を試みる | 機密情報流出、内部侵害 |
| サプライチェーン攻撃 | 委託先・取引先経由で本命企業を狙う | 顧客情報流出、取引先被害 |
| DDoS攻撃 | 大量通信でサービスを停止させる | Web停止、機会損失、信用低下 |
| フィッシング | 偽メール・偽SMSでIDやパスワードを盗む | 不正ログイン、不正送金 |
| SQLインジェクション | Webアプリの入力欄を悪用してDBを不正操作 | 個人情報漏洩、データ改ざん |
| ゼロデイ攻撃 | 修正前の脆弱性を悪用 | 侵入、情報窃取、マルウェア感染 |
| Emotet等のマルウェア | メール添付などを通じて感染を広げる | 情報窃取、他攻撃の足場化 |
| 認証情報窃取 | ID・パスワードを盗み不正ログインする | クラウド侵害、内部情報閲覧 |
| ディープフェイク詐欺 | AIで音声・映像を偽装して送金等を指示 | 不正送金、なりすまし被害 |
近年の攻撃は、単一の手口だけで終わることは少なくなっています。フィッシングで認証情報を盗み、VPNやクラウドへログインし、内部で横展開し、最後にランサムウェアを実行する、といった複合型の攻撃が増えています。
【2024〜2026年】国内サイバー攻撃の最新事例9選
ここからは、国内で発生したサイバー攻撃事例を紹介します。
各事例は、発生時期、企業・組織、攻撃手口、被害影響、教訓の流れで整理します。自社と同じ業界や似た業務構造がある場合は、特に注意して読んでください。
KADOKAWAグループのランサムウェア攻撃
発生時期:2024年6月
対象:KADOKAWAグループ、ドワンゴ、ニコニコ関連サービス
主な手口:ランサムウェア、認証情報窃取
KADOKAWAグループは、2024年6月に大規模なサイバー攻撃を受けました。グループ内の複数サービスが停止し、ニコニコ関連サービスにも大きな影響が出ました。
KADOKAWAのランサムウェア攻撃による情報漏洩に関するお知らせでは、フィッシングなどにより従業員のアカウント情報が窃取され、その情報を使って社内ネットワークに侵入され、ランサムウェア実行と個人情報漏洩につながったと説明されています。
この事例の教訓は、グループ会社全体での認証情報管理と、多要素認証、ネットワーク分離、ログ監視の重要性です。大企業であっても、従業員アカウントが入口になると、被害はグループ全体に広がる可能性があります。
保険見直し本舗グループのランサムウェア被害
発生時期:2025年
対象:保険見直し本舗グループ
主な手口:ランサムウェア
保険見直し本舗グループは、2025年にランサムウェア被害を公表しました。保険代理店は、顧客の氏名、連絡先、契約相談情報など、非常に重要な個人情報を扱うため、金融・保険業界におけるサイバーリスクの高さを示す事例です。
同社のランサムウェア被害についての調査と再発防止策の報告では、外部専門機関と連携したフォレンジック調査の結果、情報漏えいの痕跡は確認されなかったとされています。一方で、セキュリティ体制の強靭化に引き続き取り組む方針が示されています。
一部のセキュリティ関連まとめでは、同事案に関連して一次・二次被害の可能性が広く取り上げられました。ただし、最終的な公式発表では「情報漏えいの痕跡は確認されていない」とされているため、被害件数を断定する表現は避けるべきです。
この事例の教訓は、初動対応とフォレンジック調査、そしてネットワーク分離や被害拡大防止策の重要性です。
株式会社イセトーの不正アクセス事件
発生時期:2024年5月
対象:株式会社イセトー
主な手口:ランサムウェア、不正アクセス、サプライチェーン被害
株式会社イセトーは、2024年5月にランサムウェア被害を受けました。同社の複数のサーバーや端末内の情報が暗号化され、攻撃者グループのリークサイト上に、窃取されたと思われる情報のダウンロードURLが掲載されたことも確認されています。
イセトーのランサムウェア被害の続報では、公開された情報が同社サーバーから流出したものであり、一部取引先の顧客の個人情報が含まれていることが判明したと説明されています。
この事例は、情報処理サービス会社や印刷・発送業務など、顧客情報を預かる業務委託先が攻撃されると、委託元企業や自治体にも被害が広がることを示しています。
教訓は、委託先管理の重要性です。契約書にセキュリティ条項を入れるだけでなく、実際の運用、バックアップ、アクセス制御、インシデント報告体制まで確認する必要があります。
東京海上日動火災保険の委託先被害
発生時期:2024年7月公表
対象:東京海上日動火災保険の業務委託先
主な手口:委託先におけるランサムウェア被害
東京海上日動火災保険は、業務委託先である税理士法人髙野総合会計事務所のサーバーにおいてランサムウェア被害が発生し、同社顧客情報の漏えいのおそれがあることを公表しました。
同社の業務委託先におけるランサムウェア被害に伴う情報漏えいのおそれについてでは、損害査定業務等の一部を委託している先で被害が発生したことが説明されています。
この事例は、サプライチェーンリスクの典型です。自社のセキュリティ対策が一定水準にあっても、委託先で被害が起これば、自社顧客情報の漏えいリスクが生じます。
教訓は、契約時のセキュリティ確認だけでは不十分だということです。定期的な委託先評価、セキュリティ要件の明文化、インシデント時の報告義務、情報の持ち出し範囲の最小化が必要です。
栃木県クリニックのランサムウェア被害
発生時期:2025年2月
対象:宇都宮セントラルクリニック
主な手口:ランサムウェア
宇都宮セントラルクリニックは、2025年2月10日にシステム障害が発生し、調査の結果、サーバーがランサムウェア攻撃を受けたことを公表しました。
同院の不正アクセスに伴う情報漏えいの可能性および当面の業務制限についてでは、サーバーに記録されていた個人情報が最大約30万名分に及ぶことが説明されています。患者や健康診断受診者の氏名、生年月日、住所、診療情報、健康診断情報などが含まれていました。
この事例の教訓は、医療機関の規模に関係なく、患者情報・健診情報は攻撃者に狙われるということです。大病院だけでなく、地域クリニックや健診施設もランサムウェア対策が必要です。
大手航空会社のDDoS攻撃による欠航・遅延
発生時期:2024年12月
対象:日本航空(JAL)
主な手口:大量データ送付によるネットワーク障害
2024年12月、日本航空で社内外をつなぐネットワーク機器に障害が発生し、航空便に遅延や欠航が生じました。報道によると、大量のデータが外部から送りつけられたことが要因とされ、同日午後には復旧しています。
Aviation Wireの報道では、30分以上の遅延が国内線60便・国際線11便の計71便、国内線4便が欠航したとされています。Reutersも、サイバー攻撃によってJALのシステムに影響が出た一方、顧客情報の流出やウイルス被害はなかったと報じています。
この事例は、DDoSや大量通信による攻撃が、情報漏洩だけでなく社会インフラの運用に影響することを示しています。航空、物流、金融、ECなど、リアルタイム性が重要な業界では、可用性を守る対策が欠かせません。
テーマパーク運営グループ会社の情報漏洩
発生時期:2025年1月
対象:サンリオエンターテイメント
主な手口:ランサムウェア、不正アクセス
サンリオは、グループ会社であるサンリオエンターテイメントへの不正アクセスに伴い、個人情報および機密情報の漏洩可能性について公表しました。
サンリオピューロランド公式の不正アクセスによるネットワークトラブルについてでは、2025年1月21日に発生したランサムウェアによる不正アクセスについて、調査結果と再発防止策が報告されています。
最大約200万件規模の情報漏洩可能性が報じられ、来場予約やオンラインチケット購入、マイページ機能などにも影響が出ました。
この事例の教訓は、テーマパークや小売・サービス業もサイバー攻撃の標的になるということです。顧客情報、予約情報、チケット情報、会員情報を扱う企業は、ランサムウェアと情報漏洩の両方に備える必要があります。
大手製薬会社の医療従事者情報漏洩
発生時期:2024年8月公表
対象:サノフィ
主な手口:不正アクセス、委託先・端末管理不備
大手製薬会社サノフィでは、日本国内の医療従事者に関する個人情報が流出した可能性があると報じられました。
報道では、日本国内の医療従事者73万3,820人の氏名、性別、生年月日、メールアドレス、医療機関名、住所、役職、職種、診療科などが流出した可能性があるとされています。原因として、海外の業務委託コンサルタントが規定に反してIDを個人用PCに保存し、そのPCがマルウェアに感染したことが指摘されています。
この事例は、BtoB企業が保有する取引先情報や専門職情報も、重要な個人情報であることを示しています。
教訓は、委託先端末、個人PC利用、認証情報の保存ルール、データベースアクセス権限を厳格に管理する必要があるということです。
生成AIを悪用した中高生による不正契約事件
発生時期:2025年
対象:通信回線契約・不正アクセス被害
主な手口:不正アクセス、認証情報悪用、生成AI利用
2025年には、中高生が他人の楽天モバイルアカウントに不正アクセスし、通信回線を不正契約・転売したとして逮捕された事例が報じられました。
piyologのまとめでは、警視庁が中高生3人を逮捕した事案として整理されています。報道では、生成AIやインターネット上の情報を使い、攻撃に使うプログラムを作成したとされています。
この事例が示すのは、攻撃のハードルが下がっているということです。かつては高度な技術者しか実行できなかった攻撃が、生成AIや公開情報を使って未成年にも実行される時代になっています。
教訓は、企業側が認証情報の使い回し対策、多要素認証、不正ログイン検知、契約時の本人確認強化を進める必要があるということです。
紹介した事例はいずれも、業種や規模を問わず被害が発生しています。ランサムウェア、不正アクセス、サプライチェーン経由の侵害など、攻撃の手口は多様化しており、「うちは大丈夫」と言い切れる企業はありません。サイバー攻撃は事前の対策で被害を最小限に食い止めることができます。CyberCrewでは、複数名のホワイトハッカーが在籍し、実際に攻撃者が狙うポイントから現場感のあるテストでリスクを評価します。まずは無料でご相談ください。
海外で発生した大型サイバー攻撃事例5選
海外事例は、日本企業にとっても重要な参考になります。攻撃手口は国境を越えて広がるため、海外で起きた被害が数か月後に日本でも見られることがあります。
ロンドン交通機関への攻撃
発生時期:2024年9月
対象:Transport for London(TfL)
主な手口:不正アクセス
ロンドン交通局(TfL)は、2024年9月にサイバーセキュリティインシデントを公表しました。TfLの発表では、銀行口座情報に関係する約5,000人の顧客に連絡すると説明されています。
公共交通は、社会インフラそのものです。システム停止や顧客情報流出が起きると、利用者の生活、通勤、都市機能に影響します。
この事例の教訓は、公共インフラ事業者にとって、システムの可用性と個人情報保護の両方が重要だということです。
香港のディープフェイク送金詐欺
発生時期:2024年
対象:香港の多国籍企業
主な手口:ディープフェイク、ビジネスメール詐欺型の送金詐欺
香港では、詐欺グループがビデオ会議で幹部を装い、従業員に送金させるディープフェイク詐欺が発生しました。Guardianの報道では、約2,000万ポンド相当、香港ドルで約2億ドルの送金が行われたとされています。
この事例は、生成AIによって「声」や「顔」まで信用できなくなっていることを示しています。
教訓は、ビデオ会議であっても、送金や重要承認は別経路で確認することです。電話、チャット、承認システム、二重承認など、本人確認プロセスを見直す必要があります。
Oracle認証情報の大規模漏洩疑惑
発生時期:2025年
対象:Oracle Cloud関連とされる認証情報
主な手口:認証情報流出疑惑、クラウド認証基盤への影響
2025年には、Oracle Cloud関連とされる認証情報が大規模に流出した疑惑が報じられました。セキュリティ企業CloudSEKの分析では、攻撃者が約600万件のSSO・LDAP関連データを販売しているとされています。
ただし、この種の事案では、被害範囲や事実関係が調査中である場合もあります。そのため、企業は報道やセキュリティベンダーの情報だけでなく、利用中サービスの公式通知、ログ、認証情報、APIキー、SSO設定を確認することが重要です。
教訓は、クラウドを使っていれば安全というわけではないことです。MFA、条件付きアクセス、ログ監視、アカウント棚卸し、シークレット管理が欠かせません。
米UNFI(食品流通)の物流停止
発生時期:2025年6月
対象:United Natural Foods, Inc.(UNFI)
主な手口:不正アクセス、業務システム停止
米国の食品流通大手UNFIは、2025年6月にシステム上の不正な活動を検知し、一部システムを停止しました。UNFIの公式声明では、その後、顧客やサプライヤーが利用する中核システムを安全に復旧し、インシデントは封じ込められたと説明されています。
報道では、注文・出荷・請求に関わるシステム停止により、米国の食品流通に影響が出たとされています。UNFIはWhole Foodsを含む多数の小売店に商品を供給しており、サプライチェーンのデジタル依存が大きいことが浮き彫りになりました。
教訓は、物流・食品・小売業では、IT障害がすぐに棚の欠品や配送遅延につながるということです。バックアップ、代替手順、復旧計画が重要です。
WannaCry(世界20万台以上感染の教訓)
発生時期:2017年
対象:世界中のWindows端末
主な手口:ランサムウェア、未更新OSの脆弱性悪用
WannaCryは、世界規模で広がった代表的なランサムウェアです。Microsoftの解説では、150か国以上、30万台以上のコンピューターが影響を受けたとされています。
WannaCryの教訓は、今でも有効です。古いOSや未適用のセキュリティパッチを放置すると、攻撃者に悪用されます。
ランサムウェア対策では、最新化、バックアップ、ネットワーク分離、権限管理、EDR、復旧訓練が重要です。過去の事例ですが、現在の企業にもそのまま当てはまる教訓を含んでいます。
サイバー攻撃を防ぐ企業が取るべき8つの対策

ここからは、企業が実際に取り組むべき対策を8つ紹介します。基本対策から組織横断の取り組みまで、優先順位を意識して整理します。
多要素認証とパスワード管理の徹底
不正ログインを防ぐ最重要対策は、多要素認証とパスワード管理です。
メール、VPN、クラウドサービス、管理画面、SaaS、リモートデスクトップには、必ず多要素認証を設定してください。パスワードが漏れても、追加認証があれば攻撃を防げる可能性が高まります。
また、パスワードの使い回しは禁止すべきです。パスワードマネージャーを活用し、サービスごとに異なる強固なパスワードを使う運用に変えてください。
- VPN・管理者アカウントにはMFAを必須化する
- 退職者アカウントを即時削除する
- 共有アカウントを廃止する
- 漏洩済みパスワードを検知する
- パスワードマネージャーを導入する
攻撃を受けても復旧できるバックアップ体制の構築
ランサムウェア対策では、バックアップが最後の命綱になります。
ただし、バックアップを取っているだけでは不十分です。攻撃者はバックアップも暗号化しようとします。そのため、ネットワークから切り離したバックアップ、複数世代の保存、復旧テストが必要です。
基本は3-2-1ルールです。
- データを3つ以上保管する
- 2種類以上の媒体に保存する
- 1つはオフサイトまたはオフラインに保管する
さらに重要なのは、実際に戻せるかを定期的に試すことです。バックアップは「取れている」ではなく、「復旧できる」ことが価値です。
OSやソフトの最新化と脆弱性対応の習慣化
既知の脆弱性を放置すると、攻撃者にとって分かりやすい入口になります。
OS、ブラウザ、VPN機器、ファイアウォール、サーバー、CMS、WordPressプラグイン、クラウド設定など、更新すべき対象は多岐にわたります。
企業では、次の運用を整えるべきです。
- 重要資産の一覧化
- 脆弱性情報の収集
- パッチ適用の優先順位付け
- EOL製品のリプレース計画
- 緊急パッチ時の社内承認ルート整備
IPAやJPCERT/CC、ベンダー公式情報を定期的に確認し、放置期間を短くすることが重要です。
不審なメール・サイトを見抜く従業員教育の実施
フィッシングや標的型メールは、今も有効な攻撃手口です。
従業員が1人でも不審な添付ファイルを開いたり、偽ログイン画面にパスワードを入力したりすると、そこから侵入される可能性があります。
教育では、次の内容を扱うと効果的です。
- 不審メールの見分け方
- URLや送信元ドメインの確認方法
- 添付ファイルの扱い
- フィッシングサイトの特徴
- 不審メールを受け取ったときの報告方法
研修だけでなく、標的型メール訓練も有効です。目的は従業員を責めることではなく、報告しやすい文化を作ることです。
必要最小限の権限に絞ったアクセス管理
すべての従業員に広い権限を与えていると、1つのアカウントが乗っ取られたときの被害が大きくなります。
最小権限の原則、つまり業務に必要な範囲だけ権限を与える考え方が重要です。
運用ポイントは次のとおりです。
- 管理者権限を必要最小限にする
- 部署・役職ごとに権限を整理する
- 退職者・異動者の権限を即時更新する
- 共有フォルダのアクセス権を棚卸しする
- 特権IDの利用ログを監視する
ゼロトラストの考え方でも、すべてのアクセスを信頼せず、必要な範囲で認証・認可することが重視されます。
EDRやWAFなど次世代型セキュリティツールの活用
従来型のアンチウイルスだけでは、高度な攻撃を防ぎきれないことがあります。
企業規模やシステム構成に応じて、次のようなツールを検討すべきです。
| ツール | 主な役割 | 向いている対象 |
|---|---|---|
| EDR | 端末の不審な挙動を検知・調査 | PC・サーバーを多く持つ企業 |
| WAF | Webアプリへの攻撃を防御 | Webサービス・ECサイト |
| SIEM | ログを集約・分析し異常を検知 | SOC運用を行う企業 |
| ASM/EASM | 外部公開資産を把握 | クラウド・公開資産が多い企業 |
ただし、ツールは導入して終わりではありません。運用する人、見るべきログ、アラートの優先順位、対応手順まで整える必要があります。
取引先や委託先まで含めたサプライチェーン全体の防御
サプライチェーン攻撃を防ぐには、自社だけでなく、委託先や取引先のリスクも見る必要があります。
契約時には、次の項目を確認してください。
- セキュリティ対策状況
- 情報の保管場所
- 再委託の有無
- インシデント時の報告義務
- アクセス権限の範囲
- データ削除・返却のルール
- 定期的な監査・診断の有無
ソフトウェアを利用する場合は、SBOMの活用も検討すべきです。SBOMは、ソフトウェアに含まれる部品表のようなもので、脆弱なライブラリが含まれていないかを確認するために役立ちます。
万が一に備えたインシデント発生時の対応フロー策定
サイバー攻撃を完全に防ぐことはできません。だからこそ、発生時の対応フローを事前に決めておく必要があります。
初動対応で重要なのは、次の流れです。
- 感染端末・侵害サーバーを隔離する
- ログや証拠を保全する
- 情報システム部門・経営層へ報告する
- 外部専門家へ相談する
- 影響範囲を確認する
- 顧客・取引先・関係機関への通知を判断する
- 復旧と再発防止を進める
特に被害発生後72時間の動きは、企業の信頼を大きく左右します。むやみに端末を初期化すると証拠が失われるため、フォレンジック調査が必要な場合は専門家に相談してください。
サイバー攻撃対策ならCyberCrew
ここまで紹介した対策は、どれも重要です。しかし実務では、「どこから始めればいいのか」「自社にとって一番危険な入口はどこか」が分からないことも多いはずです。
CyberCrewは、ホワイトハッカーが在籍するサイバーセキュリティ専門企業です。攻撃者視点で、自社の外部公開資産、Webアプリケーション、VPN、クラウド、認証情報、ダークウェブ上の漏洩情報を確認し、現実的な優先順位で対策を整理します。
CyberCrewが支援できる主な領域は、次のとおりです。
- 脆弱性診断:Web・ネットワーク・クラウドの弱点を確認
- ペネトレーションテスト:実際の攻撃者視点で侵入可能性を検証
- レッドチーム演習:組織の検知・対応力まで評価
- ダークウェブモニタリング:漏洩ID・パスワードを調査
- インシデント対応・初動整理の支援
- 経営層向けのリスク説明資料作成
「社内で何を優先すべきか分からない」「経営層に説明できる材料がほしい」「自社が攻撃者からどう見えているか知りたい」という段階でも問題ありません。
まずは現状を整理し、攻撃者に狙われやすい入口を把握することが第一歩です。
サイバー攻撃に関するよくある質問
最後に、サイバー攻撃の事例を調べている方からよくいただく質問に回答します。
サイバー攻撃とは何か?身近な例は?
サイバー攻撃とは、インターネットやネットワークを使って、PC、スマホ、サーバー、クラウド、アカウントなどに不正な行為をすることです。
身近な例としては、銀行を装ったSMSで偽サイトに誘導するフィッシング、SNSアカウントの乗っ取り、通販サイトの不正ログイン、クレジットカード情報の盗用などがあります。
企業では、ランサムウェアによる業務停止、顧客情報の漏洩、DDoS攻撃によるWebサービス停止などが代表的です。
サイバー攻撃のワースト1位は?
「ワースト1位」は、件数、被害額、影響範囲のどれで見るかによって変わります。
IPAの情報セキュリティ10大脅威 2026では、組織向け脅威の1位は「ランサム攻撃による被害」です。業務停止、情報流出、復旧費用、信用低下など、企業への影響が非常に大きいためです。
国内事例では、KADOKAWA、イセトー、宇都宮セントラルクリニック、サンリオエンターテイメントなど、ランサムウェアや不正アクセスによる大規模被害が相次いでいます。
史上最大のサイバー攻撃は?
代表的な世界規模の事例としては、WannaCry、NotPetya、SolarWindsなどがあります。
WannaCryは、2017年に世界150か国以上へ広がり、Microsoftの解説では30万台以上のコンピューターが影響を受けたとされています。英国NHSを含む医療機関や企業にも影響が出ました。
NotPetyaは、ウクライナを起点に世界中の企業へ被害を広げた破壊的マルウェアとして知られています。SolarWindsは、ソフトウェア更新を悪用したサプライチェーン攻撃として非常に大きな影響を与えました。
サイバー攻撃の一覧(種類)は?
代表的なサイバー攻撃には、ランサムウェア、フィッシング、標的型攻撃、サプライチェーン攻撃、DDoS攻撃、SQLインジェクション、ゼロデイ攻撃、マルウェア、認証情報窃取、ディープフェイク詐欺などがあります。
それぞれ攻撃の狙いや被害が異なるため、自社の業種やシステム構成に応じて優先対策を決める必要があります。
個人でもサイバー攻撃の被害に遭う?
個人でもサイバー攻撃の被害に遭います。
代表例は、フィッシング、SMS詐欺、SNS乗っ取り、ネットバンキング不正送金、クレジットカード不正利用です。
最低限の対策として、OSやアプリを最新にする、パスワードを使い回さない、多要素認証を設定する、不審なメールやSMSのリンクを開かない、セキュリティソフトを導入することが重要です。
サイバー攻撃を受けたら最初に何をすべき?
まず、被害の拡大を止めることが重要です。
- 感染が疑われる端末をネットワークから切り離す
- 上司・情報システム部門へすぐ報告する
- ログや証拠を消さずに保全する
- 外部専門家へ相談する
- 関係先への通知や公的機関への報告要否を確認する
焦って端末を初期化すると、侵入経路や情報流出の調査が難しくなります。企業の場合は、事前にインシデント対応フローを決めておくことが重要です。
サイバー保険は加入すべき?
サイバー保険は、加入を検討する価値があります。ただし、保険だけではサイバー攻撃を防げません。
サイバー保険では、調査費用、復旧費用、損害賠償、弁護士費用、問い合わせ対応、広報対応などが補償対象になる場合があります。
一方で、保険は攻撃そのものを防ぐものではありません。脆弱性診断、多要素認証、バックアップ、EDR、従業員教育、インシデント対応計画とセットで考える必要があります。
まとめ|サイバー攻撃の事例から学ぶべきこと
サイバー攻撃の事例を見ると、被害は特定の業界や大企業だけに限られていないことが分かります。
メディア、保険、医療、航空、テーマパーク、製薬、交通、食品流通、クラウドなど、あらゆる業界で被害が発生しています。
特に重要な教訓は、次の5つです。
- ランサムウェアは依然として最重要リスクである
- 委託先・取引先経由のサプライチェーン攻撃が増えている
- クラウドやVPNなど外部接続経路が狙われやすい
- 生成AIやディープフェイクにより詐欺手口が高度化している
- 攻撃を完全に防ぐだけでなく、早期検知・復旧できる体制が必要である
対策としては、多要素認証、バックアップ、脆弱性管理、従業員教育、アクセス権限管理、EDRやWAFの活用、サプライチェーン管理、インシデント対応フローの整備が基本です。
ただし、チェックリストを埋めるだけでは十分ではありません。攻撃者から見て、自社がどのように見えているのか。どこに侵入口があるのか。漏洩済みの認証情報はないのか。そこまで確認する必要があります。
CyberCrewでは、ホワイトハッカーの視点から、企業の外部公開資産、脆弱性、クラウド、認証情報、ダークウェブ上の漏洩情報を確認し、現実的な優先順位で対策を整理します。
サイバー攻撃の事例を「怖いニュース」で終わらせず、自社の対策に活かすことが大切です。
投稿者プロフィール

- 中川 貴行
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Head of Business / Evangelist
CyberCrewの事業責任者として、企業の情報セキュリティ対策を総合的に支援。脆弱性診断やペネトレーションテスト、インシデント対応、セキュリティ教育まで幅広い領域を統括し、企業ごとの課題やリスクに応じた最適な支援体制の構築を推進しています。ホワイトハッカーの知見と事業視点をつなぎ、現場で機能する実践的なセキュリティ対策の提供を通じて、企業の安全なIT環境づくりを支えています。









