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AI生成の攻撃スクリプトが産業制御機器を標的に、Siemens S7 PLCへの攻撃活動を米政府が警告

2026年8月20日、The Hacker Newsは、米国の重要インフラで使用されているSiemens S7 SeriesのPLCを狙い、AIで生成した攻撃スクリプトを利用する活動が確認されていると報じました。攻撃者はインターネット上に公開されたPLCを探し、既知の脆弱性や弱い認証設定などを悪用するためのツールをAIの支援で作成しているとされています。米政府機関は、製造、エネルギー、水道、化学、食品・農業などの事業者に対し、PLCの外部公開停止や更新、監視強化を求めています。

The Hacker News:AI-Generated Exploit Scripts Target Siemens S7 PLCs in U.S. Critical Infrastructure

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この記事のポイント

影響のあるシステム

  • Siemens S7-200 Series:すべてのCPUバリエーションが今回確認されている攻撃活動の対象として挙げられています。
  • Siemens S7-300 Series:すべてのCPUバリエーションが対象で、314、315、317モデルなどが含まれます。
  • Siemens S7-400 Series:すべてのCPUバリエーションが対象として挙げられています。
  • Siemens S7-1200 Series:CPU 1211C、1212C、1214C、1215C、1217Cが対象として挙げられています。
  • Siemens S7-1500 Series:すべてのCPUバリエーションが対象で、F-seriesの安全制御用コントローラーも含まれます。
  • インターネットへ直接公開されているPLC:特に外部から到達可能なPLCは悪用リスクが高いと米政府機関が警告しています。
  • ネットワーク分離が不十分なPLC:インターネットへ直接公開していなくても、ITネットワークなどから不適切に到達できる構成はリスクとなる可能性があります。
  • 古いファームウェアや既知の脆弱性を抱えるPLC:攻撃者は公開情報を利用して既知の脆弱性を狙っているとされています。
  • Siemens以外のPLC:米政府機関は、現在確認されているPLCへの攻撃活動はSiemens製品だけに限定されないと注意しています。

対象となっている業種としては、重要製造業、エネルギー、水道・下水処理、化学、食品・農業、商業施設などが挙げられています。また、Siemens S7 Seriesは防衛産業基盤などのほかの分野でも利用されているため、これらの業種でも同様のリスクを想定する必要があります。

推奨される対策

  • 組織内で使用しているSiemens S7 Series PLCをすべて棚卸しし、機種やファームウェアのバージョンを確認してください。
  • Siemens ProductCERTなどの公式情報を確認し、既知の脆弱性へ対応した最新のファームウェアやセキュリティ更新を適用してください。
  • PLCをインターネットへ直接公開しない構成へ変更してください。
  • 外部からTCPポート102へ到達できる設定がないか、ファイアウォールルールを確認してください。
  • OTネットワークと社内ITネットワークを適切に分離し、不要な相互通信を禁止してください。
  • TIA PortalやSTEP 7を利用できる端末を、承認されたエンジニアリングワークステーションに限定してください。
  • PLCのパスワード保護や読み取り・書き込み保護など、利用可能なアクセス制御機能を有効化してください。
  • S7comm通信について、通常利用しない端末からの接続や営業時間外の不審な通信を監視してください。
  • 承認されていないPythonスクリプトやsnap7.dll、python-snap7を利用した通信がOT環境で確認されていないか調査してください。
  • システムインテグレーターや保守事業者がPLCへリモート接続している場合は、外部接続経路や権限設定を改めて確認してください。

OT環境では、アップデートをそのまま本番設備へ適用すると設備停止などにつながる可能性があります。そのため米政府の共同アドバイザリでも、本番適用前に開発・検証環境で更新内容をテストすることが推奨されています。可用性を維持しながら、既知の脆弱性と外部公開状態を優先的に改善することが重要です。

この記事に出てくる専門用語

  • PLC(Programmable Logic Controller):工場の機械、ポンプ、バルブ、製造ラインなどを自動制御するために使われる産業用コンピューターです。一般的なPCとは異なり、製造設備やインフラを直接制御する用途で使用されます。
  • Siemens S7 Series:Siemensが提供するPLCの製品群です。S7-200、S7-300、S7-400、S7-1200、S7-1500などがあり、工場やエネルギー設備など幅広い産業環境で利用されています。
  • OT(Operational Technology):工場設備、電力、水道、交通など、物理的な装置やプロセスを監視・制御するための技術やシステムを指します。
  • ICS(Industrial Control System):工場や重要インフラで設備を監視・制御するシステムの総称です。PLCや制御サーバー、監視端末などが含まれます。
  • AI生成の攻撃スクリプト:生成AIなどを利用して、脆弱性の悪用や機器への接続などを自動化するプログラムを作成する手法です。今回の活動では、公開情報をもとにPLCを操作するPythonスクリプトなどが生成されていると報告されています。
  • S7comm:Siemens S7 SeriesのPLCとエンジニアリング端末などの間で通信するために利用されるプロトコルです。PLCのメモリや設定情報などへのアクセスに使用されます。
  • snap7.dll/python-snap7:Siemens S7 PLCとの通信に利用できるオープンソースのライブラリです。本来は開発や監視など正当な用途でも使用できますが、今回の攻撃ではAI生成スクリプトへ組み込まれていると報告されています。
  • ラダー・ロジック:PLCで機械や設備の動作条件を制御するために使用されるプログラム方式の一つです。生産設備の起動・停止や安全制御など、物理的な動作に直接関係する場合があります。
  • Censys/ZoomEye:インターネット上で公開されているサーバーやネットワーク機器などを検索・調査できるサービスです。今回の活動では、攻撃者が外部公開されているPLCを見つけるために利用しているとされています。
  • ネットワークセグメンテーション:社内ITネットワークと工場のOTネットワークなどを分離し、必要な通信だけを許可するセキュリティ対策です。攻撃者が別のネットワークからPLCへ到達することを防ぐ目的があります。
  • エージェント型AI(AI Agent):与えられた目的に対して、情報収集、判断、ツール実行など複数の処理を自律的または半自律的に進めるAIシステムです。サイバー攻撃では、調査や脆弱性探索などを高速化する用途に悪用される可能性があります。
  • OpenClaw:台湾政府機関への別の攻撃事例で利用が報告されたAIエージェントの一つです。今回のSiemens PLCへの攻撃活動とは別の事例ですが、攻撃者によるAI活用の広がりを示す例として元記事で紹介されています。

AIが産業制御システムへの攻撃準備を高速化

NSA、CISA、FBI、DOE、EPAが2026年8月19日に公開した共同アドバイザリでは、攻撃者がAIの支援を受けてSiemens S7 Series PLCを対象とする攻撃スクリプトを生成していると警告されています。攻撃者はPLCに関する公開情報や既知の脆弱性情報を収集し、AIを利用して攻撃コードを短時間で作成・修正しているとされています。

従来、PLCやICSを狙う攻撃には、一般的なWebシステムへの攻撃とは異なる専門知識が求められてきました。制御プロトコルやPLCのメモリ構造、産業設備の動作などを理解する必要があるためです。しかし、生成AIを利用して公開資料や既存コードを整理し、目的に合わせてプログラムを作成できるようになると、攻撃ツールを準備するために必要な時間や専門知識が減少する可能性があります。

米政府機関は、AIによる攻撃スクリプト生成について、攻撃者の能力における「evolution」と位置付けています。AIを使うことで、新たな攻撃経路を短時間で検討し、防御策に応じてスクリプトを修正することも容易になる可能性があるためです。つまり今回の問題は、新たなAI固有の脆弱性が発見されたという話ではなく、既知の弱点や設定不備を悪用する攻撃者側の開発速度が高まっている点にあります。

攻撃者はインターネット上に公開されたPLCを探索

今回確認されている活動では、攻撃者がCensysやZoomEyeなどのインターネット検索サービスを利用し、外部からアクセスできるPLCを探しているとされています。こうしたサービス自体はセキュリティ調査や資産管理にも利用される正規のサービスですが、公開されている機器を攻撃対象として探し出す目的で悪用される場合もあります。

特にリスクが高いのは、PLCがインターネットから直接アクセスできる状態になっている環境です。共同アドバイザリでは、インターネットへ公開されたPLCについて「high risk for exploitation」と明確に警告しています。古いファームウェアを利用している場合だけでなく、初期設定のままの認証や十分に設定されていないアクセス制御が残っている機器も標的になる可能性があります。

また、組織自身がPLCの公開状態を把握していないケースにも注意が必要です。設備保守を担当するシステムインテグレーターや外部の管理事業者がリモートアクセス用の経路を設定している場合、資産所有者が意図しない形でPLCへ外部から到達できる可能性があります。このため、PLC単体の設定だけでなく、VPN、ルーター、ファイアウォール、保守用ネットワークを含めて外部からの接続経路を棚卸しする必要があります。

正規の監視ツールに見せかけたPythonスクリプトを使用

米政府機関によると、攻撃者が使用しているカスタムPythonスクリプトには、snap7.dllやpython-snap7といったオープンソースの産業オートメーション向けライブラリが組み込まれています。これらのライブラリそのものは悪意のあるソフトウェアではなく、Siemens S7 PLCとの通信を行う正規の開発・監視用途にも使用できます。

しかし今回の活動では、これらをAIで生成・調整したPythonスクリプトへ組み込み、正規のOT監視ツールに似せて使用しているとされています。スクリプトはS7commプロトコルを通じて、PLCのメモリや設定データ、ラダー・ロジックなどに対する読み取り・書き込みアクセスを可能にする場合があります。攻撃者はこうした機能を利用し、対象環境の調査や攻撃能力の検証を進めているとみられています。

この特徴は、防御側にとっても注意が必要です。snap7のような正規ライブラリが使われているため、単純に特定のファイル名が存在するだけで攻撃と判断することはできません。一方、承認されたエンジニアリング端末以外でsnap7.dllが使われている場合や、PythonからPLCへ直接S7comm通信が発生している場合には、不審な活動として確認する必要があります。

PLCが侵害されれば設備停止や安全上の問題につながる可能性

一般的な企業ITシステムへのサイバー攻撃では、情報漏えいや業務停止が主な影響として想定されます。一方、PLCは実際の機械や設備を直接制御するため、侵害された場合には物理的なプロセスへの影響が生じる可能性があります。今回の共同アドバイザリでも、PLCへの不正アクセスによって製造工程や公共サービスが停止する可能性が指摘されています。

さらに、設備の運転順序やプロセスパラメータが不正に変更されれば、機器の損傷や長期間のダウンタイムにつながる可能性があります。安全インターロックや緊急停止システムなどへ影響が及ぶ状況では、作業員の安全に関係するインシデントにつながる可能性もあります。また、制御方式、設備構成、独自の製造条件など、機密性の高い運用データが取得されるリスクも挙げられています。

ただし、米政府機関は今回確認されている活動について、現時点では主に継続的な偵察と攻撃能力の開発を目的としている可能性が高いと評価しています。攻撃者はPLCへの読み取りアクセスを利用して対象環境を理解し、将来的な書き込み操作や業務影響を引き起こすための準備を進めている可能性があるとされています。そのため、実際の設備被害が発生してから対応するのではなく、偵察段階で検知・遮断することが重要です。

OTでは「更新」だけでなくネットワーク分離と監視が重要

今回の共同アドバイザリでは、既知のCVEへの対応だけではなく「defense-in-depth」、つまり複数の防御策を組み合わせることが求められています。PLCのファームウェアを最新化しても、インターネットへ直接公開されていたり、認証が弱かったりすれば、別の攻撃経路が残る可能性があるためです。

特に重要なのがネットワーク分離です。米政府機関はS7commで利用されるTCPポート102について、外部境界のファイアウォールで遮断し、PLCをインターネットから到達できない状態にすることを推奨しています。また、ITネットワークとOTネットワークをDMZなどによって分離し、不正なルーティングが存在しないことを確認するよう求めています。

アクセス制御では、TIA PortalやSTEP 7を利用できる端末を承認済みのエンジニアリングワークステーションに限定し、PLC側でもパスワード保護や読み取り・書き込み権限を適切に設定することが推奨されています。さらに、設定変更を伴うアップデートについては本番設備へ直接適用するのではなく、検証環境で事前にテストする必要があります。

日本企業でも、製造工場やビル設備、エネルギー設備などにPLCを長期間利用しているケースがあります。IT部門だけで判断せず、設備管理部門、OT担当者、保守ベンダー、システムインテグレーターと連携しながら、外部公開状況、ファームウェア、ネットワーク構成、アクセス権限を確認することが重要です。

異常なS7comm通信や承認されていないPython利用を監視

PLCへの攻撃を防ぐだけでなく、すでに不審な活動が始まっていないか確認することも重要です。共同アドバイザリでは、通常とは異なるS7comm通信を監視するよう求めています。例えば、エンジニアリング用途ではない端末からPLCへ接続している場合や、通常の変更作業時間外にデータブロックへの書き込みが行われている場合は確認が必要です。

また、TCPポート102に対する連続的なスキャン、CPU情報の列挙、異なる条件で繰り返される接続試行なども偵察活動の兆候となる可能性があります。承認されたエンジニアリング端末以外でsnap7.dllが使用されている場合や、S7comm機能を含むPythonスクリプト、不明な監視ソフトウェアが存在している場合についても調査が推奨されています。

時間や接続元の観点でも確認が必要です。深夜など通常利用しない時間帯にS7comm通信が発生している場合や、人が操作しているとは考えにくい自動化された通信パターン、作業申請や変更チケットと一致しない設定変更などは異常として検知できる可能性があります。さらに、通常の保守事業者や拠点とは異なる国・IPアドレスからの接続があれば、アクセス経路を確認する必要があります。

OT環境ではEDRを直接導入できないPLCも多いため、ネットワーク側での監視やエンジニアリングワークステーションのログ、ファイアウォールログなどを組み合わせることが重要です。単一のアラートだけではなく、設備の通常運用と異なる挙動を継続的に把握できる監視体制を整えることが求められます。

台湾へのAIエージェント攻撃でも自動化の進展が確認

元記事では、Siemens S7 PLCを狙う活動とは別の事例として、AIエージェントを活用した政府機関へのサイバー攻撃についても紹介されています。イスラエルのサイバーセキュリティ企業Dreamは2026年8月、アジアの政府機関を対象にした、AIを利用したほぼ自律的な攻撃フレームワークを調査したと報告しました。Dreamは対象国を公開していませんが、台湾のデジタル発展部は同時期に、国外からの攻撃でOpenClawなどのAI Agentが利用されたことを公表しています。

Dreamの調査によると、このフレームワークはHermesとOpenClawを基盤とし、最大8つのサブエージェントを並行して動かしていました。それぞれが偵察、認証情報への攻撃、API調査、脆弱性研究、サプライチェーン調査など異なる役割を担当し、約4日間に12回の攻撃波が確認されたとされています。

Dreamは、この活動によって85件の認証情報が突破され、2,564件を超える人事関連情報やSSOのクライアントシークレット、内部データベースの認証情報などが取得されたと報告しています。また、AIシステム自身が脆弱性データベース、GitHub、セキュリティ研究を調査し、既存の手法が失敗した場合に別の攻撃方法を探す「Learning Cycles」も確認されたとしています。

Siemens PLCへの活動と台湾への攻撃が同じ攻撃者によるものだという情報はありません。しかし両事例は、AIが単に攻撃用コードの作成を補助する段階から、偵察、調査、攻撃手法の選択、複数タスクの並列処理まで支援する段階へ進んでいる可能性を示しています。防御側も、従来より短い時間で多くの攻撃が試行されることを前提に、外部公開資産の管理や監視体制を見直す必要があります。

重要なのは「AIを防ぐ」ことではなく、攻撃可能な状態を減らすこと

今回の警告で注目されるのは「AI生成の攻撃スクリプト」という点ですが、防御側がAIそのものを識別して遮断することだけが対策ではありません。米政府機関が挙げている攻撃経路は、インターネットへ公開されたPLC、既知の脆弱性、弱い認証、ネットワーク分離の不足といった、従来から知られているセキュリティ上の問題を基盤としています。

AIによって変化しているのは、攻撃者がこれらの弱点を見つけ、利用するまでの速度や必要な技術力です。これまで専門知識が必要だったPLCの通信や制御についても、公開資料、オープンソースライブラリ、脆弱性情報をAIに組み合わせることで、攻撃コードの作成や修正を効率化できる可能性があります。その結果、長期間放置されてきた既知の弱点が、以前より多くの攻撃者から狙われる可能性があります。

企業側で優先すべきなのは、PLCやOT機器の資産を把握し、不必要なインターネット公開をなくし、最新のセキュリティ更新を適用し、ITとOTを適切に分離することです。また、通常とは異なるS7comm通信や設定変更を検知できるようにしておくことで、攻撃者が設備へ影響を及ぼす前の偵察・準備段階で活動を発見できる可能性があります。

特に製造業や重要インフラでは、OT機器が10年以上利用されることも珍しくありません。生成AIによって攻撃側の開発速度が上がる状況では、「これまで攻撃されたことがない」という理由だけで既存構成を維持するのではなく、現在の外部露出や脆弱性、アクセス経路を定期的に評価することがこれまで以上に重要です。

参考文献・記事一覧

投稿者プロフィール

CyberCrew(サイバークルー)
CyberCrew(サイバークルー)
CyberCrew(サイバークルー)は、企業の情報セキュリティをトータルで支援する専門チームです。高度なスキルを持つホワイトハッカーが在籍し、サイバー攻撃の監視・検知から初動対応、リスク診断や従業員向けのセキュリティ教育まで、幅広いサービスを提供。企業のニーズに応じた柔軟な対応で、安心・安全なIT環境の実現をサポートします。

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■ セキュリティコンテスト受賞歴
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