
生成AI「Claude Code」をサイバー攻撃に悪用し、ウクライナの個人に関する62万8,000件超の情報を不正取得したとされる攻撃活動が報告されました。セキュリティ企業SOCRadarの調査によると、攻撃者「CyberXero」は51体のAIエージェントを利用し、WordPressやECサイトへの侵入を効率化していたとされています。さらに、別の攻撃活動では日本企業のWordPressサイトも標的となっており、AIを利用した攻撃の自動化への警戒が必要です。
The Hacker News:CyberXero Uses Claude Code in Campaign That Stole Over 628,000 Ukrainian Records
この記事のポイント
影響のあるシステム
- WordPress:既知の脆弱性を利用した自動攻撃の対象です。管理画面への不正アクセスやWebシェルの設置が確認されています。
- Support Board WordPressプラグイン:CVE-2026-4815のSQLインジェクション脆弱性が攻撃に悪用されています。
- wp2shell関連の脆弱性:CVE-2026-63030およびCVE-2026-60137が攻撃対象として報告されています。
- Magento・PrestaShop:ECプラットフォームとして攻撃活動の調査対象に含まれています。具体的な影響バージョンは元記事では示されていません。
- Redis:インターネットに公開されたRedisサーバーが狙われ、中国の2組織で侵害が確認されています。
- ウクライナの重要インフラ:エネルギー・公益事業関連の組織が重点的な調査や侵入の対象となっています。
- Palo Alto Networks PAN-OS GlobalProtect:別の攻撃活動「Operation Master」において、CVE-2026-0257が悪用されたと報告されています。
- Microsoft 365・GitLab:Operation Masterで認証情報を狙った攻撃やアカウント乗っ取りの試みが確認されています。
推奨される対策
- WordPress本体、プラグイン、テーマを確認し、既知の脆弱性に対する修正を適用してください。
- WordPressの管理者アカウントを点検し、身に覚えのないアカウントや権限変更がないか確認してください。
- サーバー内に不正なWebシェルや、WSO Webシェルと呼ばれる不正プログラムが存在しないか調査してください。
- Redisをインターネットへ公開している場合は、接続制御と認証設定を確認してください。
- Redisサーバーでは「~/.ssh/authorized_keys」に不審な公開鍵が追加されていないか確認してください。
- GlobalProtectなどのVPN機器について、脆弱性対策状況と不審な認証履歴を確認してください。
- Microsoft 365では不審なデバイスコード認証や大量のログイン試行に注意してください。
- Webサイトへの大量アクセス、管理者権限の取得、不審なファイル作成を継続的に監視してください。
上記の対策は、元記事の事実に基づき日本の読者向けに整理したものです。製品ごとの具体的な修正バージョンについては、各開発元が公開する最新のセキュリティ情報を確認する必要があります。
この記事に出てくる専門用語
- Claude Code:Anthropicが提供するAIコーディングツールです。ソフトウェア開発やコードの解析などを支援します。
- AIエージェント:AIモデルを利用して、指定された目的に応じた調査や処理を進める仕組みです。
- CyberXero:SOCRadarが特定した、AIを利用した侵入活動を行うとされる攻撃者の呼称です。
- 初期アクセスブローカー(IAB):組織のシステムに不正侵入し、得られたアクセス権をほかの攻撃者に販売するなどして収益化する攻撃者です。
- Cobalt Strike:本来はセキュリティ評価で使用される攻撃シミュレーションツールですが、サイバー犯罪にも悪用されています。
- PentAGI:AIエージェントを利用してペネトレーションテストの処理を自動化するオープンソースのフレームワークです。
- SQLインジェクション:Webアプリケーションの入力処理の不備を悪用し、データベースへ不正な命令を実行させる攻撃手法です。
- Webシェル:攻撃者がWebサーバーを外部から操作するために設置する不正なプログラムです。
- Redis:データの高速処理や一時保存などに利用されるデータストアです。公開設定が不適切な場合、不正アクセスの対象となる可能性があります。
- エクスフィルトレーション:システム内部の情報を外部へ不正に持ち出す行為です。
- パスワードスプレー攻撃:少数のパスワードを多数のアカウントに対して試す攻撃手法です。
- デバイスコードフィッシング:正規のデバイス認証の仕組みを悪用し、利用者を誘導して攻撃者による認証を成立させようとする手口です。
- CVE:公表された脆弱性を識別するための共通番号です。
- AdaptixC2:侵入後の端末管理や遠隔操作などに利用されるコマンド&コントロール用のフレームワークです。
Claude Codeを悪用したCyberXero、62万8,000件超の情報流出が報告される
セキュリティ企業SOCRadarは2026年10月上旬、生成AIを組み込んだ大規模なサイバー攻撃活動について調査結果を公開しました。攻撃者は「CyberXero」と呼ばれ、少なくとも2026年7月から活動していると評価されています。
SOCRadarによると、CyberXeroはロシア語を使用する金銭目的の初期アクセスブローカーとみられています。WordPressやECサイトへの不正侵入を通じてアクセス権や決済関連情報を収集する活動と、ウクライナの重要インフラに対する標的型の調査・攻撃を並行して実施していたとされています。
調査では、ウクライナの4組織から情報が不正に持ち出され、ウクライナの個人に関連する62万8,000件超の記録が攻撃者の手元に渡ったと報告されています。また、ポーランド、中国、オランダでも侵害が確認されたとされています。
今回の活動が明らかになったきっかけは、攻撃者自身のサーバー設定ミスでした。SOCRadarは、外部からアクセスできる状態になっていたディレクトリを発見し、その中に攻撃に使用されたスクリプト、AIとのやり取りの記録、認証トークン、標的の調査結果、被害者から持ち出したデータなどが保存されていたことを確認しました。
流出していた作業データの分析によって、攻撃者がどのようにAIを利用し、複数の攻撃ツールを組み合わせていたのかが明らかになったとされています。なお、これらの被害規模や攻撃者の属性はSOCRadarの調査に基づくものであり、すべての詳細が独立した調査で確認されたわけではありません。
51体のAIエージェントで攻撃を分担、4,708件をスキャンした自動化攻撃の実態

今回の攻撃で注目されているのは、AIを単なる文章生成やコード作成に使うのではなく、複数の作業を分担する仕組みに組み込んでいた点です。
SOCRadarの分析によると、CyberXeroはAnthropicの「Claude Code」を利用し、51体の専門エージェントを設定していました。これらのエージェントには、標的の調査、脆弱性の探索、攻撃手法の組み合わせ、侵入後の処理など、それぞれ異なる役割が割り当てられていたとされています。
さらに、攻撃者はオープンソースのAIペネトレーションテストフレームワーク「PentAGI」を、Cobalt StrikeのTeam Serverと連携させていました。これはClaude Codeとは別のAI活用経路であり、攻撃用コードの生成やテスト処理などを支援するために構成されていたと報告されています。
公開された調査結果によると、ある自動実行の記録では、61秒間に4,708件の標的をスキャンし、429件のWordPress管理画面へのアクセスを確認したうえで、32個のWebシェルを設置していました。
この数字は、調査で確認された特定の自動実行に関するものであり、すべての攻撃活動で同様の成果が得られることを意味するものではありません。また、AIが人間の判断を一切必要とせず、攻撃全体を独立して遂行したと確認されたわけでもありません。
それでも、調査、攻撃、侵入後の作業を複数のツールで分担・自動化する仕組みは、従来は人手を要していた攻撃工程の効率を高める可能性があります。防御側にとっては、脆弱性の公表から悪用までの対応速度や、短時間に大量のアクセスが発生する状況を想定した監視が重要になります。
AIの安全対策を回避しようとする試みも確認、拒否された操作の再要求
CyberXeroの調査では、攻撃者がAIの安全機能を回避しようとした記録も確認されています。
SOCRadarによると、攻撃者はAIエージェントに対し、自分が管理するインフラへの正当なペネトレーションテストを実施しているという説明を与えていました。これは攻撃に関連する作業を、許可されたセキュリティ検証としてAIに認識させようとする試みだったと考えられています。
また、AIが要求を拒否した場合には、新しいセッションを開始し、最初から正当な作業であるという説明を与えて再度要求する方法も確認されています。こうした手法は、対話の文脈やセッションの状態によってAIの応答が変わる性質を利用しようとするものです。
ただし、調査記録には、AIの安全機能が有効に働いた事例も含まれています。SOCRadarは、バックドアの設置、ファイアウォールの無効化、内部ネットワークへの横展開、Webシェルの配置などについて、モデルが拒否した記録を確認しています。
別の事例では、攻撃者が所有権を示す偽の情報を提示してスキャンを実行させようとしましたが、AIは繰り返し要求を拒否したと報告されています。
このことから、今回の事例を「Claude Codeの安全対策が完全に突破された」と評価するのは正確ではありません。確認されたのは、攻撃者がAIを既存の攻撃環境に組み込み、安全機能による制限を受けながらも、複数の方法で悪用を試みていたという実態です。
重要なのは、AIそのものに新たな脆弱性が存在したという報告ではなく、正規のAI開発ツールを攻撃者が不正な目的に利用したという点です。生成AIの普及に伴い、開発支援機能が攻撃ツールの作成や運用にも転用される可能性があることを示しています。
WordPressとECサイトが標的、既知の脆弱性から不正アクセスへ

CyberXeroによる攻撃活動は、ウクライナの重要インフラだけを対象としていたわけではありません。SOCRadarによると、攻撃者は世界中のWordPressサイトやECプラットフォームに対しても、既知の脆弱性を利用した広範囲な攻撃を実施していました。
WordPressを狙った活動では、wp2shellに関連するCVE-2026-63030とCVE-2026-60137、さらにSupport BoardプラグインのSQLインジェクション脆弱性であるCVE-2026-4815などが悪用されたと報告されています。
SQLインジェクションは、Webアプリケーションが受け取る入力を適切に処理していない場合に、データベースへ不正な操作を行わせる攻撃です。影響は個々の脆弱性やシステム構成によって異なりますが、認証情報や保存されたデータを不正に取得されるなどの危険性があります。
今回の活動では、WordPressの管理画面へのアクセス権を取得したり、Webシェルを設置したりする攻撃が確認されています。また、MagentoやPrestaShopなどのECプラットフォームも、攻撃活動に関連する対象として挙げられています。
ECサイトの場合、侵入によって顧客情報や決済関連情報が狙われる可能性があります。SOCRadarは、CyberXeroの広範囲な攻撃活動について、取得したアクセス権の販売や決済データの窃取による収益化を目的としていたと分析しています。
さらに、インターネットへ公開されたRedisサーバーを悪用する活動も確認され、中国の2組織が侵害されたと報告されています。Redisを利用している組織では、意図せず外部から接続できる状態になっていないかを確認するとともに、SSH認証に使用される公開鍵の登録状況を調査することが推奨されています。
これらの事例は、公開されたWebサービスや周辺システムが攻撃の入口となり得ることを示しています。WordPress本体だけではなく、プラグイン、ECアプリケーション、データストアを含めて、外部に公開している資産を把握することが重要です。
別の攻撃「Operation Master」では日本企業のWordPressも標的に
SOCRadarはCyberXeroとは別に、「Operation Master」と呼ばれるサイバー犯罪活動についても調査結果を公開しています。こちらの活動では、企業ネットワークへの侵入、顧客情報や請求関連データの窃取、盗んだ情報を利用した請求詐欺などが確認されています。
攻撃者はオンライン上で「masterblack」という名前を使用していたとされ、2026年4月から9月中旬までに複数の攻撃活動を展開していました。
特に日本の企業にとって注目すべき点は、日本企業に関連するWordPressのログインページに対して、パスワードを推測する攻撃が行われていたという報告です。
元記事によると、攻撃者は4種類のユーザー名と66種類のパスワードからなる辞書を使用し、日本企業のWordPressサイトに対して総当たり型のログイン試行を実施していました。
ただし、この記録は日本企業への攻撃試行を示すものであり、実際に日本企業のWordPressサイトへの侵入が成功したことまで確認されたという意味ではありません。被害の有無については、個別の認証ログやシステムの調査が必要です。
Operation Masterでは、ほかにもPalo Alto NetworksのGlobalProtectに関連するCVE-2026-0257の悪用、Microsoft 365を狙った認証攻撃、GitLabのCVE-2023-7028を利用したアカウント乗っ取りの試みなどが報告されています。
さらに、攻撃者は侵入後に内部システムへのアクセスを拡大し、AdaptixC2を利用した遠隔操作や、DNSトンネリングなどを通じた情報の持ち出しも実施していたとされています。
このように、攻撃対象は特定のCMSやOSに限定されていません。日本国内の企業でも、WordPressの認証管理だけでなく、VPN、クラウドサービス、開発環境などを含めた不正アクセス対策が求められます。
240万件超の詐欺メッセージ、盗んだ情報を請求詐欺に転用
Operation Masterでは、企業への侵入だけでなく、盗んだ情報を金銭的利益につなげる仕組みも確認されています。
SOCRadarによると、攻撃者は企業から取得した顧客情報や請求関連データの一部を地下フォーラムで販売したほか、複数の顧客を対象とした自動請求詐欺システムにも転用していました。
調査では、ブラジルの個人や企業を対象として、メール、SMS、WhatsAppを利用した240万件超のメッセージが生成され、622,666件の個別請求リンクが作成されたと報告されています。
これらのメッセージは、受信者を不正な請求ページへ誘導し、ブラジルの即時決済システム「Pix」を通じて支払いを行わせることを目的としていたとされています。
攻撃者のシステムには169,906件の対象者による操作が記録されており、潜在的な詐欺請求額は約3,890万ブラジルレアルと推定されています。また、クリック追跡の対象となった短縮リンクに紐づく請求額の合計は、約1億5,040万ブラジルレアルと報告されています。
ただし、これらは攻撃者のシステム上で確認された操作数や請求額に関する数字であり、同額の金銭が実際に支払われたことを示すものではありません。攻撃者が運用していた請求詐欺システムは、2026年9月中旬に停止したとされています。
今回の活動は、不正アクセスによって取得したデータが、情報の転売だけでなく、個人に合わせた詐欺メッセージの生成にも利用される可能性を示しています。
企業にとっては、情報漏えいが発生した時点で問題が終わるわけではありません。流出した情報が後続のフィッシングや請求詐欺に転用される可能性も考慮し、顧客や取引先への影響を継続的に確認することが重要です。
日本企業が優先すべき対策、AIによる攻撃の自動化にどう備えるか
今回の調査で明らかになったのは、AIそのものが未知の攻撃手法を生み出したということではなく、既存の脆弱性や攻撃ツールを組み合わせる作業にAIが利用されていたという点です。
CyberXeroではWordPressやECサイトへの大量アクセスが自動化され、Operation Masterでは企業ネットワークへの侵入から情報の持ち出し、請求詐欺に至る一連の活動が確認されています。
そのため、国内企業ではまずインターネットに公開しているシステムを把握し、WordPressや各種Webアプリケーション、VPN機器などに既知の脆弱性が残されていないか確認する必要があります。
特にWordPressでは、利用しているプラグインとテーマの更新状況を確認するとともに、不審な管理者アカウントやWebシェルが存在しないか調査することが重要です。元記事で報告されているように、管理画面への不正アクセスが成功した場合、攻撃者が継続的にサイトを操作できる状態になる可能性があります。
Redisを利用している組織では、外部公開の必要性を見直し、許可されていない接続やSSH公開鍵の不正登録がないか確認することが推奨されています。また、Microsoft 365やVPN機器についても、不審な認証履歴や普段と異なる接続状況を監視する必要があります。
攻撃の自動化が進む環境では、一度の設定確認だけで安全を維持することは困難です。脆弱性の修正に加え、アクセスログの継続的な監視、不正なファイルの検知、異常な認証試行の把握などを組み合わせることが重要になります。
今回の事例では、攻撃者自身の設定ミスから活動の詳細が明らかになりました。しかし、防御側が攻撃者のミスに依存することはできません。企業は、公開システムの脆弱性管理と侵入後の検知・対応を両立させ、短時間に大量の攻撃が発生した場合にも被害を把握できる運用体制を整える必要があります。
参考文献・記事一覧
- The Hacker News:CyberXero Uses Claude Code in Campaign That Stole Over 628,000 Ukrainian Records(2026年10月12日)
- SOCRadar:CyberXero: An AI-Augmented Initial Access Broker Targeting Ukrainian Critical Infrastructure(2026年10月6日)
- SOCRadar:Operation Master – Deconstructing a Multi-Tiered Intrusion and Monetization Pipeline
- Cloud Security Alliance:CyberXero: Claude Code Agent Swarms in an Access Broker Operation(2026年10月15日)
投稿者プロフィール

- CyberCrew(サイバークルー)
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CyberCrew(サイバークルー)は、企業の情報セキュリティをトータルで支援する専門チームです。高度なスキルを持つホワイトハッカーが在籍し、サイバー攻撃の監視・検知から初動対応、リスク診断や従業員向けのセキュリティ教育まで、幅広いサービスを提供。企業のニーズに応じた柔軟な対応で、安心・安全なIT環境の実現をサポートします。
■ 情報セキュリティサービス台帳登録事業者
■ セキュリティコンテスト受賞歴
CTF国際大会 世界No.1
CEH Master Leaderboard 世界No.1
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■ 保有セキュリティ資格
GIAC GXPN、Cisco Cybersecurity Specialist、CEH Master、CEH Practical、
Cyber Security Professional Certificate、OSCP、OSCP+、CPENT、OSWP、
eCPPT、eMAPT、CRTS、SOC-100、PEN-100、
HTB Offshore Penetration Tester(Level 3)






