
サイバー攻撃への備えとして、脆弱性診断やペネトレーションテストを実施している企業は増えてきました。一方で、最近はさらに一歩進んだ評価手法として「レッドチーム演習」を検討する企業も増えています。
ただ、実務担当者の立場では、少し分かりにくい言葉でもあります。
- ペネトレーションテストと何が違うのか
- TLPTとは同じものなのか
- 費用はどれくらいかかるのか
- SOCやCSIRT側の負担はどの程度なのか
- 経営層にはどう説明すればいいのか
こうした疑問を持つのは自然です。レッドチーム演習は、単にシステムの脆弱性を探すサービスではありません。実際の攻撃者に近い視点で、組織の防御力、検知力、対応力を総合的に確認する取り組みです。
CyberCrewでも、現場でご相談を受ける中で「脆弱性診断は実施しているが、本当に攻撃を止められるのか分からない」「EDRやSOCを導入したが、実戦で機能するか不安」といった声をよく聞きます。
レッドチーム演習は、まさにその不安に答えるための実戦型セキュリティ評価です。
この記事では、レッドチーム演習の基本、ペネトレーションテストやTLPTとの違い、攻撃タイプ、実施の流れ、費用相場、導入メリット、ベンダー選定のポイントまで、実務担当者が社内説明に使える形で整理します。
CyberCrewでは、複数名のホワイトハッカーが在籍し、攻撃者が実際に使う手法で組織の防御・検知・対応力を評価します。まずは無料でご相談ください。
TABLE OF CONTENTS
レッドチーム演習とは?目的と基本概念をわかりやすく解説
レッドチーム演習とは、攻撃者役のチームが実際の攻撃者に近い手法で組織に疑似攻撃を行い、防御側の検知・対応・復旧能力を評価する実戦形式のセキュリティ演習です。
脆弱性診断のように「このシステムに脆弱性があるか」を確認するだけではありません。ペネトレーションテストのように「特定の範囲に侵入できるか」を見るだけでもありません。
レッドチーム演習では、攻撃者が目的を達成するまでの流れを想定し、外部公開システム、クラウド環境、認証情報、メール、社内ネットワーク、SOC/CSIRTの対応、場合によっては物理的な侵入対策まで含めて確認します。
ここで見たいのは、単なる技術的な穴ではなく、組織としての防御力です。
たとえば、攻撃を検知できたか。検知したあと、誰がどう動いたか。アラートは正しくエスカレーションされたか。影響範囲を切り分けられたか。経営層や関係部門への報告は適切だったか。復旧や封じ込めの判断は妥当だったか。
レッドチーム演習の価値は、このような「実際に攻撃されたときに組織がどう動けるか」を確認できる点にあります。
レッドチーム演習の定義・目的と注目される背景
レッドチーム演習は、攻撃役であるレッドチームと、防御・検知・対応を担うブルーチームによって行われる実戦型の演習です。場合によっては、両者の学びをつなぐパープルチーム、演習全体を統括するホワイトチームも設置されます。
目的は、組織のセキュリティ対策が実際の攻撃に対して有効に機能するかを確認することです。
近年、レッドチーム演習が注目されている背景には、次のような要因があります。
- ランサムウェア攻撃の被害が継続している
- 攻撃者が認証情報、VPN、クラウド、SaaSを狙うようになっている
- EDRやSOCを導入しても、実際に検知・対応できるかは別問題である
- サプライチェーンや委託先を経由した攻撃が増えている
- 金融機関ではTLPTなど、高度な実戦型評価の必要性が高まっている
- 生成AIやAIエージェントの業務利用により、新しい攻撃面が広がっている
IPAの情報セキュリティ10大脅威 2026でも、組織向け脅威の1位は「ランサム攻撃による被害」です。2016年以降、11年連続で10大脅威に入っており、企業にとって無視できないリスクになっています。
つまり、レッドチーム演習は「高度な企業だけがやる特殊な訓練」ではなく、一定規模以上の組織が、実際の攻撃にどこまで耐えられるかを確認するための現実的な選択肢になっています。
レッドチーム・ブルーチーム・パープルチーム・ホワイトチームの役割
レッドチーム演習では、主に4つの役割が登場します。赤は攻撃、青は防御、紫は連携、白は統括と考えると分かりやすいです。
| チーム | 役割 | 主な担当 |
|---|---|---|
| レッドチーム | 攻撃役 | 攻撃シナリオ設計、疑似攻撃、侵入経路の検証 |
| ブルーチーム | 防御役 | SOC、CSIRT、情報システム部門、監視・検知・初動対応 |
| パープルチーム | 攻防連携役 | 攻撃結果を防御改善に落とし込む、検知ルールや手順を改善 |
| ホワイトチーム | 統括役 | 演習範囲、ルール、停止条件、法務・業務影響の管理 |
レッドチームは、攻撃者になりきって組織の弱点を探します。ただし、違法な攻撃を行うわけではありません。事前に合意した範囲、ルール、停止条件に従い、安全性を確保しながら実施します。
ブルーチームは、普段どおりの監視・対応を行います。SOCやCSIRT、情報システム部門が該当することが多く、演習であることを事前に知らされないケースもあります。
パープルチームは、攻撃と防御の橋渡しをする役割です。レッドチームが成功した攻撃経路を、ブルーチームがどう検知すべきだったのか、どのログを見るべきだったのか、どのルールを追加すべきかまで落とし込みます。
ホワイトチームは、演習全体の安全管理を担います。業務影響が出そうな場合の停止判断、関係者への連絡、法務・コンプライアンス上の確認など、演習を成立させるための重要な役割です。
レッドチーム演習・ペネトレーションテスト・TLPT・脆弱性診断の違い

レッドチーム演習は、単に「攻撃チームが攻めて終わり」ではありません。実際には、レッドチーム、ブルーチーム、パープルチーム、ホワイトチームがそれぞれ異なる役割を持ち、演習全体を通じて組織の防御力を引き上げます。
関係性を簡単に整理すると、次のようになります。
レッドチーム:攻撃を再現する
↓
ブルーチーム:検知・対応する
↓
パープルチーム:攻撃結果を防御改善につなげる
↓
ホワイトチーム:演習全体の安全性とルールを管理する
この関係性を理解しておくと、レッドチーム演習と他の評価手法の違いも見えやすくなります。
| 評価手法 | 主な目的 | 対象範囲 | 防御側の評価 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| 脆弱性診断 | 既知の脆弱性や設定不備の発見 | Web、ネットワーク、クラウドなど特定範囲 | 基本的には対象外 | まず技術的な弱点を洗い出したい |
| ペネトレーションテスト | 実際に侵入できるかの検証 | 定義されたシステム・範囲 | 一部含む場合あり | 重要システムへの侵入可否を確認したい |
| レッドチーム演習 | 組織全体の防御・検知・対応力の評価 | 人・プロセス・技術・クラウド・物理まで含むことがある | 中心的な評価対象 | 実際の攻撃にどこまで耐えられるか知りたい |
| TLPT | 脅威インテリジェンスに基づく高度な実戦型テスト | 重要業務・重要システム | 重要な評価対象 | 金融機関など、高度なレジリエンス評価が必要な組織 |
特にTLPTは、Threat-Led Penetration Testingの略で、脅威インテリジェンスに基づいて攻撃シナリオを設計する高度な評価手法です。金融庁の調査資料でも、金融機関のサイバーセキュリティ対応能力を高める評価手法としてTLPTの推進が言及されています。金融庁のTLPTに関する資料も、金融機関が検討する際の参考になります。
「脆弱性診断は実施している」「ペネトレーションテストも経験がある」という企業が、次のステップとして選ぶのがレッドチーム演習です。どの評価手法が自社に合うか迷っている場合も、CyberCrewでは現状を整理したうえで最適な選択肢を提案します。まずは無料でご相談ください。
ペネトレーションテストとの決定的な違い
レッドチーム演習とペネトレーションテストは、よく混同されます。どちらも攻撃者視点で行う評価ですが、目的とスコープが大きく違います。
決定的な違いは、次の3つです。
- スコープの広さ
- 事前開示の範囲
- 評価対象
ペネトレーションテストは、あらかじめ決めた範囲に対して侵入可否や脆弱性の悪用可能性を確認するものです。たとえば、Webアプリケーション、社内ネットワーク、VPN、クラウド環境など、対象を明確にしたうえで実施します。
一方、レッドチーム演習は、攻撃者が目的を達成するまでの流れを再現します。対象はシステム単体に限りません。メール、認証情報、外部公開資産、クラウド、社内ネットワーク、SOCの検知、CSIRTの対応、従業員の判断、場合によっては物理的なセキュリティまで含まれます。
| 項目 | ペネトレーションテスト | レッドチーム演習 |
|---|---|---|
| 主目的 | 脆弱性や侵入経路の発見 | 組織の防御・検知・対応力の評価 |
| スコープ | 特定システム・特定範囲 | 組織横断、複数経路 |
| 事前通知 | 関係者に共有されることが多い | ホワイトチームなど一部関係者のみが把握することが多い |
| 評価対象 | 技術的脆弱性が中心 | 人・プロセス・技術・運用全体 |
| 成果物 | 脆弱性一覧、侵入経路、修正案 | 攻撃シナリオ、検知状況、対応評価、改善ロードマップ |
| 向いている企業 | まず技術的な弱点を見たい企業 | 防御体制の実効性を確認したい企業 |
つまり、ペネトレーションテストは「このシステムに侵入できるか」を見るもの。レッドチーム演習は「実際に攻撃されたとき、組織として止められるか」を見るものです。
この違いを社内で説明できると、稟議やベンダー比較がかなり進めやすくなります。
レッドチーム演習の4つの攻撃タイプと手法
レッドチーム演習の攻撃タイプは、大きく4つに分けられます。
- External Red Teaming:外部攻撃
- Internal Red Teaming:内部攻撃
- Physical Red Teaming:物理侵入
- Hybrid Red Teaming:複合攻撃
実際の演習では、これらを単独で行う場合もあれば、複数を組み合わせる場合もあります。大企業や金融機関では、外部攻撃、内部侵害、クラウド、物理、人的要素を組み合わせた複合型のシナリオが採用されることもあります。
External Red Teaming(外部攻撃)
External Red Teamingは、外部の攻撃者を想定した演習です。インターネット上から見える資産を起点に、侵入の可能性を検証します。
対象になりやすいのは、次のような領域です。
- 外部公開Webアプリケーション
- VPNやリモートアクセス環境
- クラウドサービスの公開設定
- メールを使ったフィッシング訓練
- 漏えい済み認証情報の悪用可能性
- 公開情報からの攻撃経路分析
外部攻撃の目的は、「インターネット側から見て、どこが入口になり得るか」を確認することです。
たとえば、攻撃者は企業の公開資産を調べ、脆弱なシステムや認証情報の使い回し、設定ミスを探します。攻撃の初期侵入は、必ずしも高度なゼロデイ攻撃とは限りません。実際には、古いVPN機器、弱いパスワード、公開された管理画面、不用意なクラウド設定など、基本的な弱点が入口になることもあります。
External Red Teamingは、外部公開資産が多い企業、クラウド利用が進んでいる企業、リモートワーク環境を持つ企業に特に向いています。
Internal Red Teaming(内部攻撃)
Internal Red Teamingは、攻撃者がすでに社内へ一部侵入した、または認証情報を入手した前提で行う演習です。
近年の攻撃では、外部から一気に重要システムへ到達するよりも、最初に一般ユーザーのアカウントを奪い、その後に社内ネットワーク内で権限を広げていくケースが多く見られます。
Internal Red Teamingでは、次のような観点を確認します。
- 一般ユーザー権限からどこまで横展開できるか
- Active DirectoryやID基盤の権限設計に問題がないか
- 共有フォルダやファイルサーバーに機密情報が過剰に置かれていないか
- EDRや監視ログが内部活動を検知できるか
- ゼロトラストの考え方が実際に運用されているか
内部攻撃の演習では、「境界防御を突破された後でも、被害を限定できるか」が重要です。
ゼロトラストを掲げていても、実際には過剰権限、古い共有設定、監視されていない管理端末、不要な管理者権限が残っていることがあります。Internal Red Teamingは、そのような見えにくいリスクを確認するのに有効です。
Physical Red Teaming(物理侵入)
Physical Red Teamingは、物理的な侵入や人的なセキュリティの弱点を確認する演習です。日本ではまだ馴染みが薄いですが、海外ではレッドチーム演習の一部として実施されることがあります。
想定されるシナリオには、次のようなものがあります。
- オフィスへの不正入館の試行
- 受付や入館管理の確認
- 共連れ対策の確認
- 放置端末や印刷物の確認
- USBメモリなど外部媒体への対応確認
- 従業員へのソーシャルエンジニアリング耐性の確認
もちろん、物理侵入を含む演習は、必ず事前に明確な合意とルールを設ける必要があります。勝手にオフィスへ侵入するような行為は違法です。演習として行う場合も、対象範囲、時間帯、禁止行為、停止条件、緊急連絡先を明確にしておく必要があります。
物理侵入の目的は、驚かせることではありません。技術対策だけでは見えない、入館管理、従業員教育、端末管理、情報持ち出し対策の弱点を確認することです。
Hybrid Red Teaming(複合攻撃)
Hybrid Red Teamingは、外部攻撃、内部攻撃、物理侵入、ソーシャルエンジニアリングなどを組み合わせた、最も実戦に近い演習形態です。
実際の攻撃者は、一つの手段だけにこだわりません。外部公開資産を調べ、メールで認証情報を狙い、クラウドに侵入し、内部ネットワークへ展開し、重要データや業務停止につながるポイントを探します。
Hybrid Red Teamingでは、次のような複合シナリオが考えられます。
- 公開情報の調査からフィッシングメールを作成する
- 漏えい済み認証情報を使ってクラウドサービスへのログインを試みる
- 社内端末の権限から重要システムへの到達可能性を確認する
- EDRやSOCが異常な挙動を検知できるか確認する
- 経営層や情報システム部門への報告ルートが機能するか確認する
大企業、金融機関、重要インフラ、グローバル企業では、このような複合型の演習が特に有効です。
サイバーキルチェーンとMITRE ATT&CKの活用
レッドチーム演習では、攻撃の流れを整理するためにサイバーキルチェーンやMITRE ATT&CKが活用されます。
サイバーキルチェーンは、攻撃が段階的に進むという考え方です。一般的には、次のような流れで整理されます。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1. 偵察 | 公開情報、ドメイン、社員情報、公開資産を調査 |
| 2. 武器化 | 攻撃に使う手段やシナリオを準備 |
| 3. 配送 | メール、Web、認証情報などを使って接点を作る |
| 4. 悪用 | 脆弱性や設定不備、認証情報を悪用 |
| 5. インストール | 攻撃用の仕組みや足場を確保 |
| 6. C2通信 | 外部との通信経路を確保 |
| 7. 目的達成 | 情報窃取、権限昇格、業務停止などを試行 |
MITRE ATT&CKは、攻撃者の戦術・技術・手順を整理した知識ベースです。MITREは、ATT&CKをレッドチームが特定の脅威を模倣し、作戦計画を立てるための共通言語として使えると説明しています。
演習では、攻撃の各段階で「どこで検知できたか」「どのログが残ったか」「どの対応が遅れたか」を確認します。これにより、単なる侵入成功・失敗ではなく、防御体制のどこを改善すべきかが明確になります。
外部攻撃、内部攻撃、物理侵入、複合攻撃——どのタイプが自社に必要かは、守りたい資産や想定リスクによって異なります。CyberCrewでは、自社の業種・規模・システム構成に合わせた攻撃シナリオを設計し、実戦に近い形でリスクを評価します。サイバー攻撃は事前の対策で被害を最小限に食い止めることができます。まずは無料でご相談ください。
レッドチーム演習の実施の流れ【5ステップで解説】

レッドチーム演習は、いきなり攻撃を始めるものではありません。実務では、目的設定、シナリオ策定、ルール確認、実施、報告、改善計画までを段階的に進めます。
一般的な流れは、次の5ステップです。
- ヒアリング・目的設定
- 攻撃シナリオの策定
- 疑似攻撃の実施
- 結果分析・報告書作成
- 報告会・改善アクション策定
STEP1 ヒアリング・目的設定
最初に行うのは、目的の整理です。ここが曖昧なまま進むと、演習結果も曖昧になります。
発注側で事前に整理しておきたい情報は、次のとおりです。
- 今回の演習で確認したいこと
- 守りたい重要資産
- 想定する攻撃者像
- 対象とするシステム・拠点・クラウド
- 除外したい範囲
- 業務影響を避けたい時間帯
- SOC/CSIRTの関与範囲
- 経営層へ報告したい内容
たとえば、「ランサムウェア攻撃を想定して、初期侵入から重要データへの到達可能性を確認したい」のか、「SOCが攻撃を検知できるかを確認したい」のかでは、演習設計が変わります。
ゴールと守りたい資産を明確にすることが、演習成功の第一歩です。
STEP2 攻撃シナリオの策定
次に、攻撃シナリオを設計します。ここでは、想定する攻撃者像、攻撃経路、対象範囲、ルールを決めます。
重要なのが、Rules of Engagementです。これは、演習を安全に進めるための実施ルールです。
主な確認項目は次のとおりです。
- 演習対象のシステム・ネットワーク
- 実施期間・実施時間帯
- 禁止する攻撃手法
- 業務影響が出た場合の停止条件
- 緊急連絡先
- 取得してよい情報・取得してはいけない情報
- ログ・証跡の取り扱い
- 個人情報や機密情報の扱い
レッドチーム演習は、実戦に近いからこそ、ルール設計が重要です。攻撃者らしさを追求しすぎて業務影響を出してしまっては、本来の目的から外れてしまいます。
攻撃者像とルールを明確に決めることで、効果的で安全な演習シナリオが作れます。
STEP3 疑似攻撃の実施
シナリオとルールが固まったら、疑似攻撃を実施します。
この段階では、レッドチームが実際の攻撃者に近い視点で行動します。ブルーチームには演習の詳細を知らせない場合もあり、普段の監視・対応がどこまで機能するかを確認します。
実施中に確認する主な観点は、次のとおりです。
- 攻撃の初期兆候を検知できたか
- アラートの優先順位づけが適切だったか
- SOCからCSIRTへの連携が機能したか
- インシデント対応手順に沿って動けたか
- 被害範囲の切り分けができたか
- 経営層や関係部門への報告判断が適切だったか
もちろん、本番環境への影響を最小限に抑える配慮は必要です。業務停止、データ破壊、過度な負荷、個人情報の不適切な取得などは避けるべきです。
レッドチーム演習は、危険なことをするためのものではありません。安全に管理された範囲で、実戦に近い攻撃を再現するためのものです。
STEP4 結果分析・報告書作成
演習後は、攻撃結果と防御側の対応を分析します。
ここで大切なのは、「侵入できた」「侵入できなかった」だけで終わらせないことです。なぜ検知できたのか、なぜ見逃したのか、どのログが不足していたのか、どの判断が遅れたのかまで整理する必要があります。
良い報告書には、少なくとも次の3層が必要です。
- 経営層向け:事業リスク、優先課題、投資判断に必要な要約
- 管理者向け:体制・プロセス・運用上の課題と改善計画
- 技術者向け:侵入経路、検知状況、ログ、設定、具体的な修正内容
経営層には、技術詳細だけを出しても伝わりません。一方で、現場には抽象的なリスク評価だけでは改善できません。
経営層と現場の両方に伝わる報告書が、レッドチーム演習の価値を決めます。
STEP5 報告会・改善アクション策定
最後に、報告会を行い、改善アクションを決めます。
ここで重要なのは、演習を「イベント」で終わらせないことです。レッドチーム演習は、実施して終わりではありません。見つかった課題を改善し、再度確認して、セキュリティ体制を強くしていくことに意味があります。
改善アクションの例としては、次のようなものがあります。
- EDRやSIEMの検知ルール見直し
- アラートの優先度設計
- CSIRTの初動対応手順の更新
- 権限管理や認証設計の見直し
- クラウド設定の改善
- 従業員向け訓練の実施
- 経営層へのインシデント報告フローの整備
演習は実施して終わりではなく、改善まで回してこそ価値が出ます。
実施期間とスケジュール感の目安
レッドチーム演習の期間は、対象範囲やシナリオの複雑さによって変わります。
目安としては、次のように考えると分かりやすいです。
| 規模 | 期間の目安 | 想定内容 |
|---|---|---|
| 小規模 | 1〜2ヶ月 | 外部公開資産や限定的なシナリオを対象 |
| 中規模 | 3〜4ヶ月 | 外部攻撃、内部侵害、SOC対応確認を含む |
| 大規模 | 6ヶ月以上 | 複数拠点、クラウド、物理、TLPT相当の高度な演習 |
実際には、事前調整、契約、法務確認、ヒアリング、シナリオ設計、演習実施、報告会、改善計画まで含めると、短くても1〜2ヶ月は見ておいた方が現実的です。
特に金融機関や重要インフラでは、関係部署が多く、ホワイトチームの調整や停止条件の整理に時間がかかることがあります。
演習は実施して終わりではなく、見えた課題を改善につなげることに意味があります。CyberCrewでは、ヒアリングからシナリオ設計、疑似攻撃、報告書作成、改善アクションの策定まで、一貫して支援します。「どこから始めればいいか分からない」という段階でも問題ありません。まずは無料でご相談ください。
レッドチーム演習の費用相場
レッドチーム演習の費用は、一般的に数百万円から数千万円規模になることが多いです。「要問い合わせ」とされることが多いのは、対象範囲、期間、攻撃シナリオ、関与人数、報告会の回数、物理演習の有無によって金額が大きく変わるためです。
目安としては、次のように考えるとよいです。
| 規模 | 費用目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 限定的なレッドチーム演習 | 300万〜800万円程度 | 外部公開資産やフィッシングなど、範囲を絞った演習 |
| 標準的なレッドチーム演習 | 800万〜2,000万円程度 | 外部攻撃、内部侵害、SOC対応確認を含む |
| 大規模・TLPT相当 | 2,000万〜5,000万円以上 | 脅威インテリジェンス、複数拠点、重要業務、経営報告まで含む |
費用を左右する主な要因は、次のとおりです。
- 対象システム・拠点の数
- 外部攻撃だけか、内部・物理・クラウドまで含むか
- フィッシングやソーシャルエンジニアリングを含めるか
- SOC/CSIRTの評価をどこまで行うか
- 脅威インテリジェンスをどの程度使うか
- 報告書や経営層向け説明の粒度
- 再演習や改善支援を含めるか
稟議の段階では、「まずは限定スコープで実施し、翌年度に範囲を広げる」という進め方も現実的です。最初からすべてを対象にすると費用も工数も大きくなるため、自社の重要資産や経営リスクに近い範囲から始めると、社内説明もしやすくなります。
費用は対象範囲やシナリオによって大きく変わります。「まずは限定スコープで試したい」「稟議に向けて費用感だけ確認したい」という段階でも、CyberCrewでは現状をヒアリングしたうえで現実的な範囲と費用感をご提案します。脆弱性診断やペネトレーションテストと組み合わせたプランも相談可能です。まずは無料でご相談ください。
レッドチーム演習を導入する5つのメリット
レッドチーム演習の価値は、単に「攻撃される体験ができる」ことではありません。本当の価値は、これまで見えていなかった弱点を、実戦に近い形で確認できることにあります。
ここでは、導入メリットを5つに整理します。
実戦に即したセキュリティ体制の検証ができる
レッドチーム演習の最大のメリットは、机上では見えない本当の弱点を確認できることです。
セキュリティ製品を導入している。SOCもある。CSIRTも整備している。インシデント対応手順書もある。
それでも、実際に攻撃が来たときに機能するかは、試してみなければ分かりません。
演習では、次のような現実的な課題が見えることがあります。
- アラートは出ていたが、重要度が低く見られていた
- ログは残っていたが、誰も見ていなかった
- 検知したが、初動対応が遅れた
- 情報システム部門とSOCの連携が曖昧だった
- 経営層への報告基準が決まっていなかった
このような課題は、通常の脆弱性診断では見つかりにくい部分です。レッドチーム演習は、組織のセキュリティ体制を実戦で確認するための有効な手段です。
ブルーチーム(SOC/CSIRT)の対応力が実地で鍛えられる
レッドチーム演習は、ブルーチームにとって貴重な実戦経験になります。
SOCやCSIRTは、普段からログ監視やインシデント対応を行っていますが、本格的な攻撃シナリオを相手にする機会は多くありません。実際の攻撃では、複数のアラートが同時に発生し、判断に迷う場面も出てきます。
演習では、次のような実践的な経験が得られます。
- 不審なアラートを攻撃の流れとして捉える力
- ログを横断的に見て侵害範囲を判断する力
- 関係部署へ適切にエスカレーションする力
- 経営層に分かる言葉で状況を説明する力
- 封じ込め・復旧・再発防止を判断する力
机上訓練では得られない緊張感と学習効果があります。自社のSOC・CSIRTが本番さながらの経験を積めることは、レッドチーム演習の大きな価値です。
潜在的な脆弱性・盲点が可視化される
レッドチーム演習では、単体では大きな問題に見えない設定や運用が、組み合わさることで重大なリスクになることがあります。
たとえば、次のようなケースです。
- 古いアカウントが残っている
- 共有フォルダの権限が広すぎる
- クラウドの管理権限が過剰に付与されている
- VPNに多要素認証が設定されていない
- EDRの除外設定が広すぎる
- 退職者アカウントの棚卸しが不十分
一つひとつは軽微に見えても、攻撃者が組み合わせると侵入経路になります。レッドチーム演習では、この「組み合わせによる危険性」が見えやすくなります。
単体では問題ない設定でも、組み合わさると大きな穴になる。これを実感できるのが、レッドチーム演習の強みです。
経営層・従業員のセキュリティ意識が向上する
レッドチーム演習の結果は、経営層や従業員への説明材料としても有効です。
セキュリティ担当者が「対策が必要です」と説明しても、経営層には伝わりにくいことがあります。ところが、実際の演習結果として「この経路で重要情報に到達できる可能性がありました」「この段階で検知が遅れました」と示すと、リスクが一気に具体化します。
従業員にとっても同じです。フィッシング訓練やソーシャルエンジニアリングの結果を適切に共有すれば、セキュリティが自分ごとになります。
もちろん、個人を責める形で共有してはいけません。目的は犯人探しではなく、組織全体の改善です。
演習結果を正しく共有すれば、経営層の投資判断、現場の運用改善、従業員の意識向上につながります。
コンプライアンス要件(TLPT等)に対応できる
業界によっては、レッドチーム演習やTLPTが、コンプライアンスや監督当局対応の文脈でも重要になります。
特に金融機関では、TLPTの実効性向上やサイバーレジリエンス強化が継続的に議論されています。金融庁の資料でも、金融機関の対応能力を高める評価手法としてTLPTの推進が示されています。
また、欧州ではTIBER-EUという、脅威インテリジェンスに基づく倫理的レッドチーミングの枠組みがあります。TIBER-EUは、重要機能やそれを支えるシステムに対して、管理されたサイバー攻撃を行い、組織のサイバーレジリエンスを高めるためのフレームワークです。
さらに、決済・EC領域ではPCI DSSなどの要件も考慮されます。PCI DSSはレッドチーム演習そのものを一律に求めるものではありませんが、ペネトレーションテストやセグメンテーション検証など、実効性のあるテストを重視しています。
レッドチーム演習は、規制対応だけのために行うものではありません。ただし、金融、決済、重要インフラ、医療、製造、ECなどでは、経営リスクとコンプライアンス対応の両面で有効な選択肢になります。
レッドチーム演習サービスならCyberCrew
レッドチーム演習を依頼する際は、単に「攻撃ができる会社」を選べばよいわけではありません。重要なのは、攻撃結果を事業リスクとして整理し、現場の改善まで落とし込めるかです。
ベンダー選定では、次のポイントを確認してください。
- レッドチームやペネトレーションテストの実務経験があるか
- MITRE ATT&CKなどのフレームワークを理解しているか
- クラウド、Web、ネットワーク、認証基盤、物理、人的要素まで対応できるか
- SOC/CSIRTの検知・対応評価まで見られるか
- 報告書が経営層と現場の両方に伝わる内容になっているか
- 法務・倫理・業務影響に配慮したルール設計ができるか
- 改善支援まで伴走できるか
CyberCrewは、ホワイトハッカーが在籍するサイバーセキュリティ専門企業として、攻撃者視点を取り入れたセキュリティ診断、リスク評価、ペネトレーションテスト、レッドチーム演習を支援しています。
CyberCrewのレッドチーム演習では、実際の攻撃者と同様の手法を用いて組織を模擬的に攻撃し、防御側の検知・対応能力を多角的に評価します。単に脆弱性を見つけるだけでなく、「攻撃が起きたときに組織としてどう動けるか」まで確認します。
対応できる領域は、たとえば次のようなものです。
- 外部公開資産を起点とした攻撃シナリオ
- フィッシングや認証情報悪用を想定した初期侵入
- 内部ネットワークでの横展開リスク確認
- Active Directoryやクラウド権限の確認
- SOC/CSIRTの検知・対応力評価
- 経営層向けのリスク整理と報告
- 演習後の改善方針策定
「脆弱性診断は実施しているが、本当に攻撃を止められるか分からない」
「SOCやEDRを入れたが、実戦で機能するか確認したい」
「金融機関や大企業として、TLPT相当の高度な評価を検討したい」
「経営層に説明できる形でリスクを可視化したい」
このような場合は、CyberCrewにご相談ください。
レッドチーム演習のよくある質問(FAQ)
ここからは、レッドチーム演習を検討する際によくある質問に回答します。社内説明や稟議資料を作る際の整理にも使いやすい内容にしています。
サイバー攻撃のワースト1位は?
IPAの情報セキュリティ10大脅威 2026では、組織向け脅威の1位は「ランサム攻撃による被害」です。
ランサム攻撃は、2016年以降、11年連続で10大脅威に入っています。つまり、一時的な流行ではなく、企業が継続して備えるべき代表的な脅威です。
ランサムウェア攻撃では、次のような被害が起こります。
- 業務システムの停止
- ファイルの暗号化
- 機密情報の窃取
- 取引先・顧客への影響
- 復旧費用や信用低下
レッドチーム演習は、こうした攻撃を想定し、自社がどこまで検知・対応できるかを確認する有効な手段です。
レッドチーム評価とは?
レッドチーム評価とは、攻撃者視点で組織のセキュリティ体制を総合的に確認する評価手法です。一般的には、レッドチーム演習とほぼ同じ意味で使われます。
評価対象は、システムの脆弱性だけではありません。
- 外部公開資産
- クラウド設定
- 認証情報管理
- SOCやCSIRTの検知・対応
- 従業員の判断
- インシデント対応プロセス
- 経営層への報告体制
つまり、レッドチーム評価は、攻撃者目線で組織全体のセキュリティを総合評価する手法です。
レッドチーム演習とペネトレーションテストの違いは何ですか?
主な違いは、スコープ、開示範囲、評価対象の3つです。
- ペネトレーションテストは、特定システムへの侵入可否や脆弱性を確認する
- レッドチーム演習は、組織全体の防御・検知・対応力を確認する
- ペネトレーションテストは関係者に事前共有されることが多い
- レッドチーム演習はホワイトチームなど一部関係者だけが詳細を把握することが多い
簡単に言えば、ペネトレーションテストは「侵入できるか」を見るもの。レッドチーム演習は「攻撃されたときに組織として止められるか」を見るものです。
詳しくは、上の「ペネトレーションテストとの決定的な違い」の章で整理しています。
レッドチームはどんな手法で攻撃しますか?
レッドチームは、実際の攻撃者に近い視点で、複数の手法を組み合わせます。ただし、すべて事前に合意した範囲とルールの中で行います。
代表的な手法には、次のようなものがあります。
- 公開情報の調査
- 外部公開システムの調査
- フィッシングメールの訓練
- Webアプリケーションの脆弱性悪用シナリオ
- 認証情報の悪用可能性確認
- 内部ネットワークでの横展開リスク確認
- クラウド権限の確認
- 物理的な入館管理やUSB対策の確認
サイバーキルチェーンやMITRE ATT&CKに沿って、攻撃の各段階で防御側がどこまで検知・対応できたかを確認します。
セキュリティ対策の身近な例は?
身近なセキュリティ対策としては、次のようなものがあります。
- パスワードの使い回しをしない
- 多要素認証を設定する
- OSやアプリを最新に保つ
- 不審なメールやSMSのリンクを開かない
- ウイルス対策ソフトやEDRを導入する
- 不要なアカウントや権限を削除する
- 定期的にバックアップを取得する
ただし、組織のセキュリティは、これだけでは十分とは言えません。個人レベルの対策に加えて、SOC、CSIRT、ログ監視、インシデント対応、経営層への報告、復旧計画まで含めた体制が必要です。
レッドチーム演習は、その体制が実際に機能するかを確認するための実戦的な方法です。
まとめ|レッドチーム演習は「本当に守れるか」を確認する実戦型の評価

レッドチーム演習は、単なる高度なペネトレーションテストではありません。攻撃者視点で組織に疑似攻撃を行い、防御側がどこまで検知・対応できるかを確認する実戦型のセキュリティ演習です。
脆弱性診断は、技術的な弱点を見つけるために有効です。ペネトレーションテストは、特定の範囲で侵入できるかを確認するために有効です。レッドチーム演習は、そのさらに先にある「組織として攻撃に耐えられるか」を確認するために有効です。
費用は数百万円から数千万円規模になることが多く、決して軽い投資ではありません。しかし、ランサムウェア、サプライチェーン攻撃、認証情報の悪用、クラウド侵害、AIを使った攻撃が現実化している今、机上の対策だけでは限界があります。
特に、次のような企業はレッドチーム演習を検討する価値があります。
- 脆弱性診断やペネトレーションテストの次の段階に進みたい
- SOCやCSIRTの実効性を確認したい
- EDRやSIEMの検知力を実戦で確認したい
- 金融機関としてTLPT相当の評価を検討している
- 経営層に説明できる形でリスクを可視化したい
- ランサムウェアや標的型攻撃への備えを強化したい
レッドチーム演習で大切なのは、攻撃を受けて終わりにしないことです。演習で見えた課題を、検知ルール、権限管理、クラウド設定、インシデント対応手順、経営報告体制の改善につなげてこそ意味があります。
CyberCrewでは、ホワイトハッカーの視点から、企業の実態に合わせたレッドチーム演習を設計し、攻撃シナリオの実施から報告、改善方針の整理まで支援します。
「自社にレッドチーム演習が必要か分からない」
「まずは費用感や実施範囲だけ相談したい」
「経営層に説明するための材料がほしい」
そういった段階でも問題ありません。まずは、自社にとってどの範囲の演習が現実的かを整理するところから始めるのがよいでしょう。
投稿者プロフィール

- 中川 貴行
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Head of Business / Evangelist
CyberCrewの事業責任者として、企業の情報セキュリティ対策を総合的に支援。脆弱性診断やペネトレーションテスト、インシデント対応、セキュリティ教育まで幅広い領域を統括し、企業ごとの課題やリスクに応じた最適な支援体制の構築を推進しています。ホワイトハッカーの知見と事業視点をつなぎ、現場で機能する実践的なセキュリティ対策の提供を通じて、企業の安全なIT環境づくりを支えています。








