
Dellは、Kubernetes環境でストレージ機能を提供するDell Container Storage Modules(CSM)に存在する複数の重大な脆弱性を修正しました。最も深刻な2件はCVSS 10.0で、認証されていない攻撃者がストレージ管理者の認証情報を取得したり、管理者権限を得たりする可能性があります。別の脆弱性では、低権限の利用者からKubernetesノードのroot権限へ昇格できる恐れも報告されています。
The Hacker News:Dell CSM Flaws Enable Unauthenticated Admin Access and Root on Kubernetes Nodes
この記事のポイント
影響のあるシステム
- Dell Container Storage Modules(CSM)の1.17.0未満のバージョンが、Dellのアドバイザリで影響対象として示されています。
- 修正版としてDell CSM 1.18.0以降への更新が案内されています。
- CVE-2026-63688とCVE-2026-63692はいずれもCVSS 10.0で、認証されていないリモートまたはネットワーク上の攻撃者による管理者権限取得につながる可能性があります。
- CVE-2026-67269はCVSS 9.9で、低権限のリモート攻撃者がKubernetesクラスタのノード上でrootレベルの権限を取得する可能性があります。
- CVE-2026-54472およびCVE-2026-61421はCVSS 9.8で、認証トークンの偽造による管理者権限取得につながる可能性があります。
- CVE-2026-67273はCVSS 9.6で、Kubernetes Secretsのクラスタ全体での読み取りや、クラスタスコープのRBACリソース作成につながる可能性があります。
推奨される対策
- Dell Container Storage Modulesを利用している場合は、現在のバージョンを確認し、Dellが修正版として示している1.18.0以降へ更新してください。
- Dellは今回の問題に対する回避策や緩和策を示していないため、更新を優先してください。
- CVE-2026-54472への対応として、CSM Authorizationで使用しているJWT署名シークレットを直ちにローテーションしてください。
- 過去にkaravi-authorizationの公開ドキュメントを参考に構築した環境では、公開されていた署名シークレットを使用していないか確認し、未変更の場合はローテーションしてください。
- Kubernetes環境では、CSM関連のCustom Resource、RBAC、Secretsへの不審なアクセスや変更がないか確認してください。
- CSM Authorizationやストレージバックエンドの管理者認証情報が侵害された可能性がある場合は、関連する資格情報も含めて見直してください。
上記の対策は、元記事およびDellのセキュリティアドバイザリに基づき日本の読者向けに整理したものです。
この記事に出てくる専門用語
- Dell Container Storage Modules(CSM):Kubernetes環境とDellのストレージ製品を連携させ、認証、レプリケーション、可観測性などの機能を提供するコンポーネント群です。
- CVE-2026-63688:CSM Authorizationのストレージ用gRPCサーバーにおける認証不足の脆弱性です。CVSSスコアは10.0です。
- CVE-2026-63692:CSM Authorizationのプロキシおよびテナントサービスにおける認証不足の脆弱性です。CVSSスコアは10.0です。
- CVE-2026-67269:ContainerStorageModule Custom Resourceの処理における権限管理の不備です。CVSSスコアは9.9です。
- CVE-2026-54472:CSM Authorizationにおけるハードコードされた認証情報の使用に関する脆弱性です。CVSSスコアは9.8です。
- CVE-2026-61421:旧karavi-authorizationのJWT認証で使用される暗号鍵に関する脆弱性です。CVSSスコアは9.8です。
- CVE-2026-67273:テンプレートエンジンへの入力処理に関する脆弱性で、権限昇格や情報漏えい、RBACの不正変更につながる可能性があります。CVSSスコアは9.6です。
- JWT:JSON Web Tokenの略で、ユーザーやサービスの認証・認可情報を安全に受け渡すために使用されるトークン形式です。
- RBAC:Role-Based Access Controlの略で、ユーザーやサービスに割り当てられた役割に基づいてアクセス権限を制御する仕組みです。
認証なしでストレージ管理情報へ到達するCVE-2026-63688

今回公表された脆弱性の中でも、CVE-2026-63688はCVSS 10.0と評価されている重大な問題です。Dellによると、CSM Authorization 2.4.0の「csm-authorization-storage」gRPCサーバーに、重要な機能に対する認証が不足していました。この問題を悪用すると、認証されていないリモート攻撃者が、登録されているストレージアレイすべてについて、ストレージバックエンドの管理者認証情報へ不正にアクセスできる可能性があります。
Dellは、この脆弱性によってCSM Authorizationのセキュリティモデルを完全に回避できる可能性があり、対応する5つのDellストレージ製品ファミリーにまたがってストレージインフラの管理権限を取得される恐れがあると説明しています。単一のKubernetesワークロードだけではなく、CSMを介して接続されているストレージ基盤そのものへ影響が及ぶ可能性がある点が重要です。
同じくCVSS 10.0のCVE-2026-63692では、CSM Authorizationのプロキシおよびテナントサービスで認証制御を回避できる可能性があります。Dellによると、悪用に成功すると認証されていないネットワーク上の攻撃者がAuthorizationサービスの完全な管理者権限を取得し、複数テナントにまたがるストレージリソースへアクセスしたり変更したりできる可能性があります。
単一のCustom ResourceからKubernetesノード全体を侵害する可能性
CVE-2026-67269は、Dell CSM OperatorのContainerStorageModule Custom Resourceを処理するreconcilerに存在する権限管理の問題で、CVSS 9.9と評価されています。Dellによると、低い権限を持つリモート攻撃者がこの問題を悪用すると、権限を昇格させ、クラスタノード上でrootレベルのアクセスを取得できる可能性があります。
さらにDellは、単一のCustom Resourceを送信することで、Kubernetesクラスタ内のすべてのノードを侵害できる可能性があると説明しています。KubernetesのCustom Resourceは、標準のAPIリソースを拡張して独自の設定や機能を管理するための仕組みです。CSM Operatorはこの情報を読み取り、必要なストレージ関連コンポーネントの状態を自動的に調整します。この処理に権限管理上の不備があることで、通常は限定された操作しか許可されていない利用者から、ノードレベルの高い権限へ到達できる恐れがあります。
コンテナ環境では、個々のPodやNamespaceの権限制御だけで安全性を判断することはできません。Operatorはクラスタ全体へ影響を与える強い権限を持つケースがあるため、Operatorの脆弱性がノードやクラスタ全体の侵害へつながる可能性があります。今回の問題は、Kubernetes上でストレージ管理コンポーネントに与える権限の大きさと、そのコンポーネント自体を安全に保つ重要性を示しています。
固定された認証情報や暗号鍵から管理トークンを偽造
CVE-2026-54472は、CSM Authorizationモジュールでハードコードされた認証情報が使用されていたことに起因する脆弱性で、CVSS 9.8と評価されています。Dellによると、リモートから認証を受けていない攻撃者がこの問題を悪用すると、暗号学的に有効な管理者トークンを偽造し、CSM Authorizationプロキシへ管理者としてアクセスできる可能性があります。
この場合、攻撃者は通常の認証処理を回避し、接続されているテナントのストレージアクセス方針を不正に管理できる恐れがあります。Dellはソフトウェアのアップデートに加えて、JWT署名シークレットを直ちにローテーションするよう推奨しています。脆弱性を修正しても、過去に使用されていた署名情報が攻撃者に知られている場合、古い秘密情報をそのまま使用し続けることはリスクになるためです。
CVE-2026-61421も同様にJWTへ関係する問題です。Dellによると、現在はアーカイブされ保守されていない「karavi-authorization」の公開ドキュメントで、JWT署名用シークレットとして特定の値が実際のトークン例とともに紹介されていました。この設定をそのまま使用し、後から秘密情報を変更していない環境では、公開された署名シークレットを知る攻撃者が認証トークンを偽造し、管理者権限を取得できる可能性があります。
Kubernetes SecretsやRBACにも影響するCVE-2026-67273

CVE-2026-67273は、テンプレートエンジンで使用される特殊な要素を適切に無害化できていない問題で、CVSS 9.6と評価されています。Dellによると、リモートアクセス可能な低権限の攻撃者が悪用すると、権限昇格、機密情報へのアクセス、RBAC設定の不正変更につながる可能性があります。
特に重大なのは、悪用に成功した攻撃者がKubernetes Secretsをクラスタ全体で読み取れる可能性がある点です。Secretsには、パスワード、APIキー、証明書、トークンなどの重要情報が保存されている場合があります。これらへアクセスされると、CSMだけでなく、同じクラスタ上で稼働している別のシステムや外部サービスへ影響が広がる可能性があります。
さらに、攻撃者はクラスタスコープのRBACリソースを作成できる可能性があるとDellは説明しています。これはKubernetes本来のアクセス制御を実質的に迂回できることを意味します。したがって、今回の脆弱性を抱えた環境については、単にCSMを更新するだけでなく、過去のRBAC変更履歴、Secretsへのアクセス、意図しないClusterRoleやClusterRoleBindingの作成などがなかったかを確認することも重要です。
対象環境ではCSM 1.18.0以降への更新を優先
DellのセキュリティアドバイザリDSA-2026-448では、Container Storage Modulesの1.17.0未満を影響対象として掲載し、1.18.0以降を修正版として示しています。また、Dellは今回の脆弱性について回避策や代替となる緩和策を公開していません。そのため、該当環境ではCSMのバージョンを確認し、修正版へのアップデートを優先する必要があります。
特に注意すべきなのは、今回の問題が単一のアプリケーションコンテナだけに限定されていないことです。脆弱性によっては、ストレージバックエンドの管理者認証情報、複数テナントのストレージアクセス、Kubernetesノードのroot権限、Secrets、RBACなど、クラスタの重要な管理領域へ影響する可能性があります。このため、インターネットへの公開状況だけで危険性を判断せず、CSMへアクセス可能なネットワークやユーザーの範囲も含めて確認する必要があります。
また、CVE-2026-54472についてDellはJWT署名シークレットの即時ローテーションを明示的に推奨しています。karavi-authorizationを過去に利用していた環境についても、公開されていた設定例のシークレットを使用していないかを確認することが重要です。更新前の環境で不審な操作が疑われる場合は、Kubernetesの監査ログ、RBAC変更、Secretsへのアクセス、CSM Authorizationの認証履歴などを含め、侵害の有無を調査する必要があります。
参考文献・記事一覧
- The Hacker News
- Dell Technologies – DSA-2026-448: Security Update for Dell Container Storage Modules Multiple Vulnerabilities
投稿者プロフィール

- CyberCrew(サイバークルー)
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