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CTFで勝てる人だけが、本当に強いわけではありません

サイバーセキュリティの世界では、どうしても目に見える実績が注目されやすくなります。大きなCTFで上位に入った、SNSでよく見かける、登壇している、発信力がある。そうした要素がそろうと、「この人は相当できる人だ」と受け止められやすいものです。

もちろん、それ自体は不自然なことではありません。CTFで結果を出すには、知識だけでなく、発想力やスピード、手を動かして突破口を見つける力が必要です。勝てる人が高い実力を持っているのは間違いありません。

ただ、現場で仕事をしていると、それだけでは測れない強さがあると感じる場面が少なくありません。競技ではあまり名前を見かけなくても、実務では驚くほど頼りになる人がいます。逆に、よく知られているからといって、あらゆる場面で強いとは限りません。

CTFはとても価値のある場です。けれど、セキュリティの実力を語るとき、それだけで人を測ってしまうのは少し違う。そんな感覚を持つことがあります。

CTFには、確かな価値があります

まず前提として、CTFを軽く見るつもりはまったくありません。

CTFは、セキュリティを学ぶうえで非常によくできた訓練の場です。限られた時間の中で手がかりを拾い、仮説を立て、検証し、正解へたどり着く。その過程で、技術の引き出しも、考え方の柔軟さも鍛えられます。

特に、これからこの分野に入っていく人にとっては、CTFはとても良い入口になります。Web、バイナリ、フォレンジック、暗号、OSINTなど、幅広い領域に触れられるうえ、自分がどこに面白さを感じるのかも見えやすいからです。

実際、CTFを通じて力をつけた技術者はたくさんいます。競技で鍛えた感覚が、そのまま実務で生きることもあります。そういう意味でも、CTFで結果を出すことは十分に尊重されるべき成果です。

ただ、実際の現場はCTFのようには進みません

一方で、実務の現場は、CTFのように整理されていないことがほとんどです。

最初から何が起きているかが明確とは限りません。必要な資料がそろっていないこともありますし、ログを見てもノイズが多く、判断材料にならないこともあります。欲しい権限がすぐに得られるとは限らず、調査できる範囲が限られることも珍しくありません。

CTFは、解くべき問題が用意されています。対して実務では、そもそも何が問題なのかを見極めるところから始まることが多いです。

この違いは、思っている以上に大きいです。

実務で問われるのは、速さだけではありません

現場で必要になるのは、単純なスピードやひらめきだけではありません。

たとえば、情報が足りない中でも筋の良い仮説を立てる力。断片的な痕跡から違和感を拾う力。うまく説明できない挙動を、急いで結論づけずに丁寧に追う姿勢。調査が思うように進まなくても、前提を見直しながら進める粘り強さ。さらに、技術的に可能かどうかだけでなく、業務への影響や優先順位まで踏まえて判断する冷静さも必要です。

こうした力は、表彰やランキングにはなかなか現れません。ですが、インシデント対応や脆弱性調査のような場面では、むしろこちらのほうが重要になることもあります。

表に出ていない人の中に、深い技術を持つ人がいます

セキュリティの世界には、あまり前に出ない技術者がいます。

SNSで日常的に発信しているわけでもない。カンファレンスで名前を見かけることも少ない。資格や実績を積極的にアピールするわけでもない。それでも、いざ難しい事案になると、その人に相談が集まる。そういう人は確かにいます。

普段は静かでも、システムの挙動を深く理解していて、複雑な問題の整理がうまい。少ない手がかりから本質を見抜く。そういう技術者は、表に出る機会が少なくても、現場では強く信頼されています。

実際、実力の出方はひとつではありません。

  • Webアプリケーションの挙動を細かく読み解くのが得意な人
  • マルウェア解析やリバースエンジニアリングに強い人
  • クラウドの権限構造や設定不備を丁寧に見抜ける人
  • 検知ルールや運用設計の精度を高めるのがうまい人
  • 攻撃の成立条件を現実的につないで考えられる人

こうした強みは、必ずしも表舞台でわかりやすく可視化されるものではありません。けれど、実務では確かな差になります。

知名度と実力は、必ずしも一致しません

この業界では、どうしても「見えやすいもの」が評価されやすくなります。

ランキング、フォロワー数、資格、登壇歴、公開されたWriteup、受賞歴。どれも努力の積み重ねですし、価値のあるものです。ただ、それらだけでその人の実力のすべてがわかるわけではありません。

表に出ている情報から見えるのは、その人の一部分です。活動量や露出の多さは伝わっても、理解の深さや、現場での判断の質までは見えにくいことがあります。

言い換えると、目立っていることと、本当に頼れることは、必ずしも同じではありません。

CTFと実務では、求められるものに少し違いがあります

どちらが優れているかという話ではなく、性質が違うと考えたほうが自然です。

観点CTF実務のセキュリティ
課題のあり方解くべき問題があらかじめ用意されている何が問題かを探るところから始まることが多い
環境比較的整理されている情報不足や制約が多く、状況も複雑になりやすい
求められる力発想力、スピード、突破力切り分け、継続的な検証、判断力、業務理解
成果の見え方点数や順位で比較しやすい再現性、説明責任、改善へのつながりが重視される
ゴール問題を解き切ることリスクを把握し、被害を防ぎ、次に生かすこと

こうして並べてみると、CTFで強い人が実務でも強いことは十分ありますが、実務で強い人が必ずしもCTFで目立つとは限らない、ということも見えてきます。

本当に頼られる人は、必ずしも目立つ存在ではありません

現場で仕事をしていると、「この人は普段あまり目立たないけれど、肝心な場面では本当に強い」と感じる人に出会います。

難しい事象でも慌てずに整理できる。情報が不足していても、筋道を立てて確認を進められる。複雑なシステムでも表面的な理解で済ませず、本質を押さえている。そういう人は、派手な言葉を使わなくても、周囲から自然に信頼されています。

もちろん、発信している人や登壇している人の中にも、本当に深い技術を持った方はたくさんいます。そこを対立のように語るのは正しくありません。

ただ、「よく見かけるから実力がある」「表に出てこないからそこまでではない」といった見方は、かなり危ういと思います。人の力は、思っている以上に静かなところに現れることがあります。

人を見るときのものさしは、もう少し広くてもいいはずです

CTFの実績は、たしかにひとつの大きな指標になります。努力の量も、技術への向き合い方も見えやすいからです。

それでも、それだけを唯一の基準にしてしまうと、見逃してしまう人が出てきます。

静かに調べ続ける人。防御の現場を支えている人。難しい環境を地道に理解している人。人前に出ることより、技術そのものに時間を使ってきた人。そうした人たちも、この業界では欠かせない存在です。

サイバーセキュリティの世界では、もっと幅のある見方が必要だと思います。速く解けることも大切ですが、深く理解すること、曖昧な状況でも考え続けられること、派手ではない作業を最後までやり切れることも、同じくらい大事です。

最後に残るのは、見せ方ではなく中身です

誰が優秀なのか、誰が本当に強いのか。そうした話は、外から見えやすい要素で判断されがちです。

けれど、現場で最後にものを言うのは、注目の集め方ではなく、どこまで理解しているかです。見栄えのよさではなく、実際に結果を出せるかどうかです。名前の知られ方ではなく、難しい局面でどれだけ支えになれるかです。

CTFで勝てる人は、間違いなくすごいです。ですが、競技の場では目立たなくても、実務では圧倒的に頼りになる人がいます。そして、状況が厳しくなるほど、そうした人の強さがはっきり見えてきます。

人を評価するときも、自分の成長を考えるときも、目に入りやすい実績だけで決めないほうが、実態には近いはずです。
静かでも、確かな技術を持つ人はいます。むしろ、その存在に気づける視点のほうが、大事なのかもしれません。

投稿者プロフィール

イシャン ニム
イシャン ニム
Offensive Security Engineer
15年以上の実績を持つ国際的なホワイトハッカーで、日本を拠点に活動しています。「レッドチーム」分野に精通し、脆弱性診断や模擬攻撃の設計を多数手がけてきました。現在はCyberCrewの主要メンバーとして、サイバー攻撃の対応やセキュリティ教育を通じ、企業の安全なIT環境構築を支援しています。
主な保有資格:
● Certified Red Team Specialist(CyberWarFare Labs / EC-Council)
● CEH Master(EC-Council)
● OffSec Penetration Tester(Offensive Security)

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